Vol.751 理学療法士の挑戦 ― リハビリと経営の狭間で

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クリニック奮闘記

2024.09.26

クリニック奮闘記

Vol.751 理学療法士の挑戦 ― リハビリと経営の狭間で

理学療法士の中村は、クリニックで長年リハビリに携わってきた。彼の仕事は、怪我や病気からの回復を目指す患者をサポートすることだ。患者一人ひとりの身体の状態に合わせたリハビリプランを作り、彼らが日常生活に復帰できるようにサポートすることが中村のやりがいだった。しかし、クリニックの経営に関する話が持ち上がると、彼は複雑な思いを抱いていた。

ある日、クリニックの院長が会議で新しい取り組みを発表した。それは、リハビリスタッフにも経営的な目標を設定し、リハビリ成果や患者満足度、再来院率といった指標を評価に組み込むというものだった。中村はこの話を聞いて戸惑った。リハビリは数値で測れるものではないと感じていたし、患者との信頼関係が何よりも大切だと思っていたからだ。

「リハビリは人間性が求められる仕事だ。数字にとらわれて、患者との信頼が損なわれるのではないか?」中村はそう考えていた。しかし、院長は「リハビリ成果の向上が患者の満足度やクリニック全体の評価に直結する」と説明し、経営と医療の融合が必要だと説いた。

最初は疑問を感じていた中村だが、次第に院長の言葉を受け入れるようになった。特に、患者の回復状況をデータ化し、改善点を明確にすることで、個別のリハビリプランをより効果的に作成できると気づいたのだ。彼は経営的な視点を取り入れることで、より効率的に患者をサポートできることを実感し始めた。

リハビリチームでも数値目標が設定され、患者の機能回復率や満足度、さらにはリハビリの継続率といった指標が評価の基準となった。中村はこの新しい評価制度に不安を感じつつも、自分のスキルを高めるための機会として前向きに捉えることにした。

しかし、課題もあった。リハビリは時間がかかることが多く、目標達成が難しい患者もいる。そのため、中村は常に数値目標を意識しながら仕事を進めるプレッシャーを感じていた。さらに、数値に追われるあまり、患者との時間を十分に取れないことにジレンマを抱えていた。

そんな時、院長が中村に声をかけた。「数値はあくまで目安だ。大切なのは、リハビリの質と患者との信頼関係を維持することだ。」院長は、リハビリスタッフが数値に過剰にとらわれないように、定期的なフィードバックを導入し、質的な評価も併せて行う仕組みを作った。これにより、中村は再びリハビリの本質に立ち返ることができた。

さらに、院長はリハビリスタッフのキャリアパスにも経営的視点を取り入れた。個々の成果が昇進や給与にも反映される仕組みが導入され、中村は自身の成長とクリニック全体の成長がリンクしていることを実感するようになった。

次第に、中村は経営目標がリハビリにおいても重要な役割を果たすことに気づいた。経営と医療の両立は難しいものの、リハビリの質を高めるための指標として有用だと理解したのだ。彼は他のリハビリスタッフにもその考えを共有し、チーム全体で目標に向かって努力するようになった。

数年が経ち、中村はリハビリチームのリーダーとして、スタッフ全体をまとめる立場に立つようになった。彼のリーダーシップのもと、リハビリチームはクリニック全体の評価を引き上げ、患者からの信頼も厚くなっていった。

中村は、リハビリと経営の両方において成長し、クリニックにとって欠かせない存在となった。彼の物語は、医療の質を保ちながらも、経営的な視点を取り入れることでクリニックの発展に寄与することができるということを示している。そして、彼の挑戦は、他のリハビリスタッフにも大きな影響を与え、チーム全体が一丸となって患者の回復に取り組む姿勢を生み出していた。