2024.12.02
クリニック奮闘記
Vol.799 クリニック・病院における財務分析のポイントと収益改善への活用
医療機関の財務分析は、単なる数字の羅列ではなく、経営状況を把握し、将来の成長を促すための重要なツールです。ここでは、財務分析のポイントと、収益改善や利益改善に繋げるための具体的な活用方法について解説します。
1. 財務分析のポイント
医療機関における財務分析では、以下のポイントに注目することが重要です。
- 収益性分析:
- 医業収益の推移: 診療科目別、患者数別など、詳細な収益構造を分析することで、収益の柱となる診療科や患者層を特定できます。
- 収益性の高い診療科の強化: 収益性の高い診療科への集中的なリソース配分や、新しい医療サービスの導入を検討できます。
- コスト構造の分析: 人件費、医薬品費、医療材料費など、各費目ごとのコスト比率を分析し、コスト削減の余地を探ることができます。
- 安全性分析:
- 自己資本比率: 医療機関の財務的な安定性を測る指標です。自己資本比率が低い場合は、外部資金への依存度が高く、経営リスクが高まる可能性があります。
- 流動比率: 短期的な支払い能力を示す指標です。流動比率が低い場合は、運転資金が不足し、支払いが滞る可能性があります。
- 効率性分析:
- 病床稼働率: 病床の利用効率を示す指標です。病床稼働率が低い場合は、病床数の見直しや、新しい患者層の獲得を検討する必要があります。
- 人件費比率: 人件費が収益に占める割合を示す指標です。人件費比率が高い場合は、人員配置の見直しや、業務効率化を図る必要があります。
2. 収益改善・利益改善への活用
財務分析の結果を基に、以下の施策を検討することで、収益改善や利益改善に繋げることができます。
- 収益源の多角化:
- 新しい診療科の開設や、既存の診療科における新たな医療サービスの導入
- 外来患者だけでなく、入院患者や予防医療への取り組み強化
- 在宅医療や訪問看護など、地域連携による収益源の開拓
- コスト削減:
- 人件費削減のための業務効率化や人員配置の最適化
- 医薬品費や医療材料費の削減のための調達ルートの見直しや、共同購入
- 光熱費や通信費などの固定費削減
- 経営効率化:
- 電子カルテシステムの導入による事務作業の効率化
- 医療機器の共同利用やリース契約の活用
- 経営管理システムの導入による経営情報の可視化
- マーケティング強化:
- ターゲット層に合わせた広報活動の実施
- 地域住民との連携による医療機関の認知度向上
- インターネットを活用した情報発信
- 経営戦略の立案:
- 中長期的な経営計画の策定
- 競合病院との差別化戦略の立案
- 地域医療連携の強化
3. その他
- 定期的な財務分析:
- 財務分析は、単発ではなく、定期的に実施することが重要です。
- 月次、四半期、年次など、適切な頻度で分析を行い、経営状況を常に把握しましょう。
- 専門家への相談:
- 財務分析の結果が複雑な場合や、専門的な知識が必要な場合は、税理士やコンサルタントなどの専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ
医療機関の財務分析は、経営改善のための重要なツールです。財務分析の結果を基に、収益構造の改善、コスト削減、経営効率化、マーケティング強化など、様々な施策を検討し、実行することで、医療機関の持続的な成長を実現することができます。