2025.09.01
クリニック奮闘記
Vol.982 小さなクリニックだからこそ必要なチームマネジメント
はじめに
大規模な病院と比べて、クリニックはどうしても少人数での運営となります。医師、看護師、そして医療事務スタッフが一丸となって診療を支える構造であり、一人ひとりの役割が極めて大きな意味を持ちます。特に、レセプト業務においては一人のスタッフに大きな負担がかかりやすく、「属人化」という課題が生じやすいのが現実です。
ここでは、小さなクリニックにおけるチームマネジメントの重要性を、レセプト業務を中心に考えてみたいと思います。
1. 小規模クリニックの特性とリスク
小規模クリニックでは、医療事務が1〜2名という体制が珍しくありません。そのため、以下のようなリスクが顕在化しやすくなります。
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レセプト業務の属人化
特定のスタッフがレセプト請求に精通している一方で、他のスタッフは知識が乏しい状況。退職や休職があれば一気に業務が停滞します。 -
多岐にわたる業務負担
医療事務スタッフは受付、会計、電話対応に加え、レセプト業務まで担うため負担が大きい。繁忙期には残業やミスが増えるリスクがあります。 -
スタッフの定着率低下
特定のスタッフに業務が集中すると、不公平感や疲弊感が高まり、離職につながるケースも少なくありません。
こうした状況を防ぐためには、「チームでのマネジメント」が欠かせないのです。
2. レセプト業務の共有と教育
小規模クリニックこそ、レセプト業務を全員で理解し、共有する仕組みが必要です。
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共同チェックの仕組みづくり
レセプト請求前に複数のスタッフで点検する体制を整えることで、ミスの減少と知識の共有が同時に実現します。 -
教育機会の確保
レセプトの基本構造や診療報酬制度の変更点について、定期的に勉強会を開くことで、チーム全体の底上げが可能です。 -
マニュアルの作成
属人化を防ぐためには、経験豊富なスタッフの知識を形式知化し、マニュアルに落とし込むことが不可欠です。
こうした取り組みにより、「誰でもある程度のレセプト業務ができる」体制が整い、業務の安定性が向上します。
3. チームマネジメントの工夫
小規模クリニックでは、スタッフ同士の人間関係や雰囲気が経営に直結します。以下の工夫が有効です。
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役割の見える化
レセプトに関する役割を明確にし、「誰がどの部分を担うのか」をチーム全体で共有します。 -
相互支援の仕組み
受付や会計が混雑した際に、看護師が一時的に患者案内を手伝うなど、柔軟な協力体制を築きます。 -
小さな成功体験の積み重ね
「今月のレセプトで返戻ゼロを達成できた」といった成果をチームで共有し、達成感を高めることが大切です。
4. 定着率を高めるレセプト教育
小規模クリニックにおける最大の課題は「人材の定着」です。そのために有効なのが、レセプトを通じた教育とキャリア形成です。
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レセプト知識を習得することで、自身の専門性を実感できる
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経営に直結する業務を担うことで、責任感とやりがいが増す
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給与や評価の根拠にもつながり、モチベーション向上に寄与する
スタッフが「このクリニックで成長できる」と実感できる環境づくりが、結果として離職率の低下につながります。
5. まとめ
小さなクリニックだからこそ、一人の退職やミスが大きな影響を与えます。そのリスクを最小限にするためには、レセプト業務の属人化を防ぎ、チームで支え合うマネジメントが欠かせません。
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レセプトを中心に業務を共有化する
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教育とマニュアル化で知識をチーム全体に広げる
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相互支援と小さな成功体験で一体感を醸成する
これらの取り組みを重ねることで、クリニック経営は安定し、スタッフにとっても働きやすい職場が実現します。