Vol.1128 「"とりあえず継続"が経営を圧迫する」 ―見直すべき診療メニューとは何か―

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クリニック奮闘記

2026.03.30

クリニック奮闘記

Vol.1128 「"とりあえず継続"が経営を圧迫する」 ―見直すべき診療メニューとは何か―

クリニックの日常診療において、一度導入された診療メニューや検査、処置は、その後大きな見直しが行われることなく継続される傾向がある。これは医療の継続性という観点では一定の合理性を持つが、経営の視点から見ると、必ずしも最適な状態とは限らない。むしろ、「とりあえず継続されている業務」が積み重なることで、診療効率や収益構造に歪みが生じているケースも少なくない。本稿では、惰性的に継続されている診療メニューが経営に与える影響について、実例をもとに考察する。

まず前提として、診療メニューの適切性は時間の経過とともに変化する可能性がある。開業当初は有効であった取り組みも、患者層の変化や医療環境の変化により、その役割を終えている場合がある。しかし現場では、過去の成功体験や慣習に基づいて業務が維持されることが多く、見直しの機会が失われがちである。

ある都市部の内科クリニックでは、定期的な検査項目が長年にわたり見直されることなく継続されていた。このクリニックでは、生活習慣病の患者に対して一定の頻度で複数の検査を実施していたが、その内容は開業当初に設定されたものがそのまま踏襲されていた。

院長が診療内容を精査したところ、現時点では必ずしも必要性の高くない検査が含まれていることが明らかとなった。これらの検査は一件あたりの収益は小さいものの、実施件数が多いため、全体として相当な時間を占めていた。また、検査結果の説明やフォローアップにも時間がかかり、診療全体の効率を低下させる要因となっていた。

このクリニックでは、検査項目の見直しを行い、必要性の高いものに絞ることで、診療時間の短縮と効率化を実現した。結果として検査件数は減少したが、時間あたりの診療単価は向上し、全体としての収益性は改善した。この事例は、単に「多く実施すること」が必ずしも経営上の最適解ではないことを示している。

整形外科クリニックにおいても、類似の問題が見られる。ある整形外科では、物理療法や簡易的な処置が多く実施されていたが、その多くが過去の運用に基づいて継続されているものであった。これらの処置は一定の需要がある一方で、一件あたりの収益性は高くなく、かつ実施に時間とスペースを要するという特徴があった。

院長が診療内容を再評価したところ、一部の処置については患者のニーズと必ずしも一致していないことが判明した。特に、症状の改善に対する寄与が限定的であるにもかかわらず、慣習的に継続されているケースが存在していた。

このクリニックでは、処置内容の見直しを行い、患者の状態に応じた選択的な実施に切り替えた。その結果、診療の流れが整理され、待ち時間の短縮や診療の質の向上につながった。また、不要な処置が減少したことで、限られた時間と資源をより有効に活用できるようになった。

訪問診療クリニックでは、「とりあえず継続」の影響がさらに顕著に現れる場合がある。ある訪問診療クリニックでは、定期訪問の頻度や内容が画一的に設定されており、患者ごとの状況に応じた調整が十分に行われていなかった。

このクリニックでは、すべての患者に対して同様の頻度で訪問を行っていたが、実際には症状が安定している患者に対しても同じ頻度で訪問が行われていた。その結果、必要性の低い訪問が一定数発生し、全体の訪問効率が低下していた。

院長が訪問スケジュールを見直したところ、患者の状態に応じて訪問頻度を調整することで、診療の効率を大幅に改善できることが明らかとなった。訪問件数自体は適正化されたが、その分、必要性の高い患者への対応に時間を充てることが可能となり、結果として診療の質と効率の双方が向上した。

これらの事例に共通しているのは、「継続すること自体が目的化している業務」が存在している点である。本来、診療メニューは患者のニーズや医療的必要性に基づいて選択されるべきものであるが、実際には過去の運用や慣習によって維持されているケースが少なくない。

重要なのは、現在行っている診療が「本当に必要かどうか」を定期的に検証することである。この際には、単に収益性だけでなく、診療全体への影響を含めて評価する必要がある。例えば、一件あたりの収益が小さくても、診療の流れを円滑にする役割を果たしている場合もあれば、逆に収益があっても全体の効率を低下させている場合もある。

また、見直しを行う際には、すべてを一度に変更するのではなく、段階的に実施することが現実的である。現場の負担や患者への影響を考慮しながら、優先順位をつけて対応することが重要である。

クリニック経営においては、新しい取り組みを導入することと同様に、既存の業務を見直すことが重要な意味を持つ。「とりあえず継続」されている業務の中には、改善の余地が存在している可能性が高い。その見直しを通じて、診療の質と効率を同時に高めることが、持続的な経営につながると考えられる。