2017.11.01
クリニック奮闘記
Vol.1 給料アップを要求するスタッフに、応じられない院長
開業してから 5 年が経ち、院長としの貫禄も備わってきた A 院長の整形外科クリニックは連日大忙しで、地元でも人気のあるクリニックの一つです。
人気の理由はいくつかありますが、スタッフの患者対応の素晴らしさが一つに挙げられます。医療的なことは言うまでもなく、ハートフルな対応が年配の患者さんには受け入れられているのでしょう。看護部門の主任看護師をはじめ、リハビリ部門の主任 PT も他のスタッフの手本となるべく、規律正しく勤務する毎日です。もちろんスタッフを取りまとめる A 院長の人望も皆が認めるところとなっています。
そんなスタッフを誇りに思う院長は、現場は二人の主任に任せていました。
ある日のこと、院長は主任 PT から、折り入って相談したいことがあるので時間が欲しいと言われました。何事かと内心穏やかではなかったのですが、診療時間終了後にその時がやってきたのです。
主任 PT 「院長、実は給料を上げて欲しいのですが・・・・・・。」
院長 「十分ではないかもしれないけど、世間並みの給料は出していると思うのだけど」
主任 PT 「開業当初から比べると患者も増えてきました。私も頑張って自分のファンを作ってきた様に思います。
今の給料はクリニックへの貢献度に見合っているとは思えません。」
院長 「・・・・・」
主任 PT 「上げて頂けないのであれば、声を掛けられている他のクリニックに行こうと考えています。」
院長 「少し考えさせて下さい。」
今まで信頼していたスタッフだけに、院長の落胆ぶりは相当なものでした。彼の言う様に給料アップを受け入れると、他のスタッフの給料も同様にアップしないといけなくなります。また交渉したことで聞き入れられたとなれば、今後も起こりうる問題となるため、院長としては受け入れ難い問題でした。
最終的に院長が出した結論は「NO」でした。残念ながら事を起こした主任 PT も退職することとなり、看板スタッフを失ったクリニックには大きな痛手となりました。しかしクリニックを守る立場にある院長としては当然の結論です。他のスタッフも院長の毅然とした態度にむしろ敬服し、幸いなことに、院内の結束はさらに強まったのでした。
(まとめ)
給料に対する不満は、たとえアップさせたとしてもモチベーションのアップにはつながりません。一時的に不満はなくなるかもしれませんが、必ず新たな芽が出てきます。給料ではない「やりがい」の部分にフォーカスした日頃のスタッフ教育が重要なのです。
また逆に相場より高い給料で迎え入れたスタッフは、よりいい処遇を求めて他の職場へ移る傾向がありますので、いい人が採用できたからと安心することも禁物です。
給料はモチベーションの一つの要素には違いありませんが、そればかりで人を繋ぎ止めることはできません。院長の仕事として日々の診療はもちろん重要ですが、スタッフの教育や管理も疎かにできない仕事の一つです。人任せにすることなく、自らがスタッフの中に入っていく心構えが必要です。
メディカルタクト
代表コンサルタント 柳 尚信