2021.03.04
クリニック奮闘記
Vol.662 事業継続のために必要なこと
統計データ上、企業の10年生存率は10%程度です。しっかりと経営をしている事業所であってもこの程度なのです。これまでクリニックの場合、恵まれた経営環境にあったこともあり、この統計には当てはまらない業種の一つに数えられていました。しかしこの一年の間に様相は変わり、収入減、利益減に直面しています。
コロナ関連による倒産件数は、リーマンショック後に比べると少ないようですが、これは、緊急融資等の政策による支援が功を奏していると考えられます。当面の資金を確保することによって営業が継続できているのです。しかし輸血をしながら延命しているに過ぎず、根本的な解決にはなっていません。院長が経営者としてすべきは、『延命している間に、次の一手を打つこと』です。市場が冷えている状況下で積極的な設備投資は行いにくいので、守りを固めることを考えていきましょう。
・固定経費を見直しましょう
●家賃交渉の余地はないか?不動産は借り手市場に移っています。近隣に安い物件があれば移転することも選択肢に入れてみましょう。内装設備の減価償却が済んでいなければ財務的には厳しい面がありますが、家賃の減額部分を考慮し、長期で回収できる資金計画が経つのであれば、検討可能です。
●リース契約の見直し
資金調達を簡単にするために、安易にリース契約を結んでいないでしょうか?期間満了により再リース期間に入っている物品があれば、買取りもしくは新規購入(この場合は自己資金での購入)により毎月発生するリース料の削減を検討しましょう。コロナ関連の融資は低利で利用することができますので、キャッシュフローを増やすことができるチャンスでもあります。
●人件費の見直し
スタッフの雇止めなどの対策は上策ではありません。医療は人の手がなければサービスを提供することができない業種です。スタッフを減らすことはサービスの劣化(医療の質的な担保ができなくなる)を招きかねません。
業務の棚卸をすることで、無駄な業務の排除をしていきましょう。絶対にやらなければならない業務のみを残します。後回しにできるものは優先順位が低いか、業務そのものが不要であることも考えられます。今までしていたことだから・・・という発想を捨てて組み立てし直しましょう。その結果、仕事の時間効率が上がりサービス向上にも繋がります。患者サービスの向上は医業収益の増加に帰ってきます。切羽詰まった状況下では。解雇等のリストラもやむを得ない場合がありますが、『人員を削減することは、増収するための手段を捨てること』になります。
(まとめ)
本稿では、筋肉質の経営構造にするために、固定費の見直しについてまとめてみました。
すべてがムダであるとは言いません。全ての経費は"収入を得るための支出"であることの認識を持ちつつ、再検討をお願いいたします。
代表コンサルタント 柳 尚信