2024.05.21
クリニック奮闘記
Vol.703 必要なものにだけ資金を使う
事業を継続するためには、資金が回っていることが条件となります。赤字であっても資金が循環すれば倒産しないのです。
逆に黒字であっても資金が回らなければ倒産します。黒字倒産と呼ばれるのですが、大きな設備投資をした際に設備の稼働率が上がらない状態陥り、更に売り上げが落ち込んだときに起こりうるものです。
本稿では、自由に使える資金とはどいうものなのかを考えてみたいと思います。
事業が上手くいって、お金が貯まってくると誰しも買い物がしたくなります。飲食や接待の頻度が増える、使用頻度の高くない医療機器を購入する、衛生材料や医薬品を必要以上に購入して在庫として残ってしまう、、など枚挙にいとまがありません。飲食や交際費は、その都度、経費計上され損益に反映されるので認識しやすいのですが、衛生材料や医薬品の在庫問題や資産の購入には注意が必要です。
①衛生材料や医薬品の購入について
いずれ使うからということで大量購入してしまっている場合を考えてみて下さい。決算期末までに使い切ってしまえば、購入費用は全額経費ですが、残ってしまうと在庫として計上され、費用からは除外されてしまいます。購入の際には支払いが済んでいるにも関わらず経費にならないのです。そうすると利益が増えることとなり、これに対する納税が発生することになります。手元に資金はないのに納税が発生するので、資金繰りが非常に厳しくなります。
②使わない医療機器の購入
利益が出たときに、利益を圧縮するために医療機器を購入することがあります。これは購入費用の一部を減価償却費として費用計上することができるからです。そして、この医療機器が患者サービスに貢献して、クリニックにも利益貢献してくれれば設備投資の効果があったといえるのですが、もともと使用頻度の低い機器であれば問題が生じます。購入時に資金は一度に支出されます。減価償却費が計上されるので、納税額は減りますが、これに対する売上がなければ、ただの赤字にしかなりません。
税金が減らしたい一心で、お金を使ったところで事業の効率が上がらなければ、ただの浪費なのです。
むしろそのまま納税した方が、手元資金の流動性は高いのかもしれません。
在庫の問題でいえば、医薬品などは消費期限があります。期限切れで処分することになると丸損です。また物がたくさんあると、ぞんざいに扱いがちです。物を大切にするという意味においても、購入単価が高くなったとしても、必要なものを必要な分だけ購入するようにしましょう。稲盛和夫氏は、このことを【一升買いの原則】と言っています。
医療機器の購入について、よく目にするのは、美容レーザーなどの購入です。専門のクリニックでもないのに数百万円の器機を購入しているのです。診療メニューに入れるつもりで購入するのですが、専門家でないので利用頻度が高くなりません。1年もしないうちに倉庫行きになっていることもよくある話です。
利益がでたからといって、ムダ使いしないようにしましょう。コロナ禍のような不測の事態が起こった時、何らかの理由で売り上げが激減したとき、頼りになるのは内部留保のみです。1年くらいの運転資金は現金として確保しておきましょう。それを上回る資金を余剰資金と考えることが必要なのではないでしょうか。