Vol.711 人口減少がクリニック経営に及ぼす影響

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クリニック奮闘記

2024.06.24

クリニック奮闘記

Vol.711 人口減少がクリニック経営に及ぼす影響

日本の人口減少問題は、多くの業界に影響を与えていますが、特にクリニック経営においては顕著です。人口減少と少子高齢化がクリニック経営にどのような影響を及ぼすのか考察していきたいと思います。

1. 患者数の減少

地域差の影響

人口減少に伴い、特に地方や過疎地域では若年層の流出が進んでいます。これにより、クリニックの主な患者層である地域住民の数が減少し、患者数の減少が避けられません。都市部でも少子化の影響で新生児や小児科の患者が減少する傾向があります。

高齢化の影響

高齢化の進行により、高齢者向けの医療需要は増加します。内科や整形外科、循環器科などの需要が増える一方、小児科や産婦人科の需要は相対的に減少します。これにより、クリニックの診療科目やサービスの見直しが必要となります。

2. 医療従事者の確保難

労働力不足

人口減少は労働力不足を招き、医療従事者の確保が困難になります。特に地方では医師や看護師の数が不足しがちです。これにより、クリニックの運営に必要な人材を確保することが難しくなり、診療体制の維持が困難になる可能性があります。

高齢化する医療従事者

医療従事者自身も高齢化が進んでおり、定年退職や体力の低下に伴う労働時間の短縮などが問題となります。若い医療従事者の育成と確保が急務ですが、DXと絡めて業務そのものを再構築する必要があります。

3. 経営コストの増加

医療技術の進歩

高齢化に伴い、慢性疾患の治療や介護が増加します。これに対応するための最新医療機器の導入や技術研修が必要となり、経営コストが増加します。特に、小規模なクリニックではこれらの費用負担が大きく経営を圧迫する要因となります。医療機器の導入に際しては適切な設備投資計画のもとに実行すべきであり、少なくとも5年~10年のスパンで投資計画を検討する様にしましょう。

診療報酬の変動

政府は医療費削減のために診療報酬の改定を行いますが、これがクリニックの収入に直結します。特に、少子高齢化による医療費増大を抑制するため、診療報酬の引き下げが行われる可能性が高く、クリニック経営にとっては厳しい状況が続くと予測されます。令和6年度の診療報酬の改定を見ると、今後の医療行政の考え方が透けて見えてきます。その内容は決して楽観視できるものでなく、他の産業と同様に、厳格な経営が求められていることが伺い知れます。

4. 患者ニーズの多様化

高齢者のケア

高齢者が増えることで、医療だけでなく介護やリハビリなどの総合的なケアが求められます。クリニックはこれに対応するため、訪問診療や在宅医療サービスの拡充が必要です。また、高齢者の多様な健康ニーズに対応するため、専門的なケアやサービスの提供が求められます。在宅医療サービスの拡充には、医療従事者の育成だけでなく、医療事務スタッフの育成も重要なテーマになってきます。人財育成は一朝一夕にはできません。今からでも教育育成プランを検討していきましょう。OJTが難しい医療現場では、外部研修や業務をアウトソーシングすることで、業務の品質を向上させることも視野に入れてみましょう。

IT技術の導入

デジタル化の進展に伴い、オンライン診療や電子カルテの導入が進んでいます。高齢者もインターネットを利用する機会が増えたため、クリニックもIT技術を駆使して患者とのコミュニケーションを改善し、効率的な診療を提供することが求められます。今の60代以上はスマホを日常的に利用しています。ある程度のITリタラシーはありますので、積極的にDX推進を行いましょう。

5. 地域医療の役割

地域包括ケアシステム

政府は地域包括ケアシステムの構築を推進しており、地域のクリニックはこのシステムの中核的役割を担うことが期待されています。地域住民が住み慣れた場所で安心して生活できるよう、医療・介護・福祉の連携が重要となります。クリニックは地域の健康管理を総合的に支える役割を果たすため、地域医療の充実が求められます。

地域連携の強化

人口減少に対応するためには、地域の医療機関同士の連携が重要です。クリニックは、病院や他の医療機関、介護施設と協力し、患者に最適な医療サービスを提供することが求められます。これにより、限られた資源を有効活用し、地域全体の医療サービスの質を向上させることが可能となります。

結論

人口減少と少子高齢化はクリニック経営に多大な影響を与えます。患者数の減少や医療従事者の確保難、経営コストの増加などの課題に直面しています。しかし、高齢者医療の需要増加や地域包括ケアシステムの推進など、新たなニーズや機会も生まれています。これに対応するためには、クリニックは柔軟に診療体制を見直し、地域医療の中核としての役割を果たすことが重要です。技術革新や地域連携を活用し、持続可能なクリニック経営を目指すことが求められます。