2024.07.10
クリニック奮闘記
Vol.717 医療事務スタッフの抱える問題
院長先生にとって、医療事務スタッフの業務はまるで闇に包まれた謎の領域でした。そのため、全てを任せっきりにしてしまうことが多く、問題が積み重なっていくばかりです。この物語では、医療事務スタッフたちが直面するさまざまな問題について探ってみましょう。
医療事務という職種に特有の仕事の進め方が原因となる問題点
静かな朝、受付カウンターに立つ山本さんは、次々と訪れる患者さんに笑顔で対応していました。しかし、その内側には多くの重荷がのしかかっていました。患者対応、会計、レセプト作成、電話対応--すべてを一人でこなさなければならず、彼女の疲労は日に日に増していきました。
「また診療報酬が改定されたの?」山本さんは、厚い資料を前にため息をつきました。医療保険制度や専門用語を覚えるのも大変なのに、毎回の改定で新しい知識を身に付けなければなりませんでした。
ある日は診療が混み合い、別の日は閑散とする--業務量の変動も彼女を悩ませました。「今日は計画通りに進めるかな?」と不安を抱えつつ、彼女は忙しく動き回ります。
そして、診療報酬の改定もまた彼女たちの負担でした。新しい規則や対応が頻繁に発生し、そのたびに業務の進め方を見直さなければなりませんでした。DX化が進んでいるとはいえ、提出書類の多くはまだデータ化されておらず、彼女の机は紙の山で埋め尽くされていました。
スタッフ間のコミュニケーション上の問題点
受付と診療区画を隔てる壁は、物理的な障害だけでなく、コミュニケーションの障壁でもありました。佐藤さんが診療区画で忙しく動き回る中、受付で働く田中さんは患者の情報を共有するのに苦労していました。
「もっと情報共有が必要だよ」と田中さんが訴えても、各スタッフはそれぞれの業務に追われ、チームとしての連携が取れないことが多かったのです。「まるで蛸壺だな」と田中さんは思いました。それぞれが自分の仕事に集中するあまり、全体の最適化が図られていないのです。
さらに、誰がどの業務を担当するのかが曖昧で、業務の重複や漏れが発生することもありました。主任の役割を果たすべき人物も、責任感と自覚がないためにうまく機能していませんでした。
意見の対立も問題の一つでした。新しく入った中途採用のスタッフは、それぞれの前職場でのやり方を持ち込んでくるため、意見がぶつかり合い、コミュニケーションが円滑に進まないことがありました。
院長先生(医師)とのコミュニケーション上の問題点
院長先生の指示が曖昧なことも多く、スタッフはどのように業務を進めればよいのか分からないことがありました。忙しい院長先生とは、必要なタイミングでコミュニケーションが取れず、指示を仰ぐのも一苦労でした。
医療の専門知識を持つ院長先生と、事務的な側面を担当するスタッフとの間には、理解のギャップも存在しました。業務改善や個々の業務に対するフィードバックが不足し、スタッフのモチベーションや業務効率に影響を与えていました。
レセプト業務特有の問題点
田中さんは、レセプト業務を行っていました。ある程度までは電子カルテが作成してくれますが、最終的には目視による点検工程は外すことができません。患者数の多いクリニックでは、その処理件数も膨大で、残業しながらこなしている状況ですが、正直なところ精神的にもかなりまいってしまっています。
あるとき、田中さんは入力処理を誤ってしまいました。このミスに気づかず提出した結果、国保連から「返戻」を受けてしまい、再提出を求められました。これにより、クリニックの収入が遅れるだけでなく、田中さんの業務も増えることになりました。特に、複数の患者のレセプトに同じミスがある場合、その影響は大きくなり、クリニック全体の業務に支障をきたすことになりました。
医療事務スタッフたちは、今日も多忙な日々を送っています。その背中には、多くの重荷とともに、改善への希望もまた宿っているのです。