Vol.720 令和6年度の診療報酬改定から読み解く医療財源の厳しさ

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クリニック奮闘記

2024.07.18

クリニック奮闘記

Vol.720 令和6年度の診療報酬改定から読み解く医療財源の厳しさ

令和6年度の診療報酬改定から、日本の医療財源の確保がいかに厳しい状況にあるかが伺えます。将来に向けて診療報酬の増額を期待することは難しいため、クリニックはその前提で舵取りをしなければなりません。本稿では、収入の減少がもたらす経営へのインパクトを物語風にまとめてみました。

ケース1: 超音波検査機器の更新遅延

若手の内科医、田中医師は、そんな厳しい状況にもかかわらず、毎日患者と向き合っていました。彼は常に最新の医療技術に触れることで、患者に最善の治療を提供したいと考えていました。だが、クリニックの財政は厳しく、最新の超音波検査機器の導入が見送られることになりました。

田中医師は、古い超音波検査機器を前にため息をつきました。この機器は何年も前に導入されたもので、画像の解像度や処理速度は最新のものに比べて劣っていました。彼は、患者の体内の異常を見逃さないよう、いつも細心の注意を払っていましたが、最新の機器があれば、もっと早く、もっと正確に診断できるのに、と感じていました。

ある日、田中医師のもとに、一人の中年女性が訪れました。彼女は最近、お腹の痛みを感じるようになり、心配でクリニックを訪れたのです。田中医師は、まず超音波検査を行うことにしました。古い機器を使って慎重に画像を確認しながら、彼は不安を感じていました。もしも何か重大な見落としがあったら...。

検査が終わり、田中医師は画像を見つめました。画面に映る映像は不鮮明で、彼は何度も目を凝らして確認しました。結局、彼は異常を見つけることができませんでした。しかし、その日の夜、彼は自宅で再びその画像を思い出し、心配が募りました。

数週間後、その女性が再びクリニックを訪れました。痛みは悪化しており、彼女の表情には明らかな不安が浮かんでいました。田中医師は再度検査を行いましたが、今回は明らかに異常が見つかりました。彼は、早期に異常を発見できなかったことを悔やみ、自分の無力さを痛感しました。

ケース2: 心臓の超音波検査機器の問題

その日、さらにもう一人の患者が来院しました。50代の男性で、最近胸の違和感を訴えていました。田中医師は心臓の超音波検査を行うことにしましたが、古い機器では心臓の詳細な動きを鮮明に捉えることができませんでした。特に、細かな動脈の詰まりや心臓壁の異常を確認するのが難しかったのです。田中医師は慎重に検査を進めましたが、やはり不鮮明な画像に悩まされることになりました。

その夜、田中医師は自宅で二人の患者のことを思い出し、眠れぬ夜を過ごしました。彼は、自分の手の届かないところで患者の健康が脅かされていることに、強い無力感を覚えました。最新の機器があれば、もっと早く、もっと正確に診断できたはずだという思いが、彼の心に重くのしかかりました。

クリニックの対応策

田中医師の悩みは、クリニック全体が直面する問題でもあります。診療報酬の削減により、最新の医療機器を導入するための資金が不足しています。しかし、いくつかの対応策を講じることで、状況を改善することができるかもしれません。

1. 効率的な資金管理

クリニックの経営陣は、財務状況を詳細に分析し、不要な支出を削減することも重要です。全ての支出に対して費用対効果の検証をすべきであり、費用を固定化させない工夫も検討すべきです。業務の外注化(アウトソーシング)を積極的に取り入れ、オペレーションを軽くするということも管理コストの削減につながります。このように経営効率を高めることで最新機器の導入資金を確保できる可能性があります。

2. 公的助成金や補助金の活用

地域や国が提供する医療機器の更新に関する助成金や補助金を積極的に活用することが求められます。これにより、クリニックの財政負担を軽減し、必要な機器の導入を進めることができます。

3. 医療スタッフの教育と研修の充実

最新の医療知識や技術を持つスタッフの育成は、診療の質を向上させるために欠かせません。資金が限られている中でも、オンライン研修や外部講師の活用など、工夫を凝らして教育を続けることが重要です。

これらの対応策を実施することで、田中医師のような現場の医師たちが抱える悩みを軽減し、クリニック全体として患者に対する医療の質を向上させることができるでしょう。患者一人ひとりに最善の医療を提供するために、クリニックは日々の努力を続けていくことが求められます。