Vol.721 業務を外注化することのリスクについて(レセプト請求業務の場合)

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クリニック奮闘記

2024.07.22

クリニック奮闘記

Vol.721 業務を外注化することのリスクについて(レセプト請求業務の場合)

弊社はレセプト請求代行業というアウトソーシング事業を行っています。スタッフの退職問題、院内教育の不備の問題、残業時間の削減や業務の効率化を考えたときに有効な手段ではあります。しかしながら外注すること自体に問題があることも認識しなければなりません。本稿では、レセプト外注における業者が持っているリスクについて言及していきたいと思います。

東京都心にある中規模の病院、東都メディカルクリニックは、近年の患者数増加により、スタッフの業務負荷が限界に達していた。院長の藤井達也は、業務効率化のためにレセプト作成の外注を検討していた。

藤井は会議室に集まった幹部たちに向かって言った。「これ以上、スタッフに負担をかけ続けるわけにはいかない。レセプトの外注を本格的に検討しようと思う。」

事務長の佐藤が口を開いた。「確かに業務の効率化は重要ですが、外注にはリスクもあります。特にデータセキュリティや品質管理の問題です。」

藤井はうなずいた。「そうだ、リスクは大きい。だからこそ、慎重に進めなければならない。」

藤井は数週間かけて、いくつかのレセプト作成業者を精査した。その中でも特に信頼できると感じたのは、メディカル・サポート株式会社だった。過去の実績や評判も良く、セキュリティ対策も万全のようだった。

メディカル・サポートの営業担当者、山本が病院を訪れた。「藤井院長、当社は最新のセキュリティ技術を導入しており、情報漏洩のリスクを最小限に抑えています。また、経験豊富なスタッフが正確かつ迅速にレセプトを作成いたします。」

藤井は納得しつつも、慎重に質問を続けた。「具体的にどのようなセキュリティ対策を講じているのですか?」

山本は自信を持って答えた。「まず、全てのデータは暗号化され、安全なサーバーで管理されています。さらに、内部監査を定期的に行い、セキュリティポリシーの遵守を徹底しています。」

藤井は最終的にメディカル・サポートと契約を結ぶことを決断した。契約書には、サービス内容や期待される成果、セキュリティ対策などが詳細に記載されていた。また、サービスレベルアグリーメント(SLA)を設定し、業務品質の基準を明確にした。

外注が始まると、病院内の業務は大幅に効率化された。レセプト作成にかかる時間が削減され、スタッフは患者対応や医療サービスの向上に専念できるようになった。初期コストも予想以上に低く抑えられ、藤井はこの選択が正しかったと感じていた。

ある日、藤井の元に一通のメールが届いた。それは、メディカル・サポートからの緊急連絡で、サーバーに不正アクセスがあったという内容だった。藤井はすぐに佐藤を呼び、対策を協議した。

「藤井院長、幸いにも暗号化が施されていたため、患者情報が漏洩することはありませんでしたが、念のために全データのセキュリティチェックを行う必要があります。」佐藤は冷静に言った。

藤井は深く息を吐いた。「これが外注のリスクだ。だが、すぐに対応策を講じてくれたことは評価できる。」

その後、藤井は新たなリスクに気づいた。それは外注業者の倒産や事業撤退のリスクである。ある日、藤井は業界ニュースで、同業他社のメディカル・リンク社が突然倒産したというニュースを見た。藤井は再び幹部たちを集めた。

「我々が契約しているメディカル・サポートが突然倒産したり、事業を撤退したりするリスクについて考える必要がある。」

経理部長の田中が心配そうに言った。「倒産した場合、我々のレセプト作成がストップしてしまいます。事業撤退も同様です。」

藤井は頷いた。「その通りだ。だからこそ、リスク管理が重要だ。」

藤井はこの新たなリスクを考慮し、定期的な監査と評価をさらに強化した。メディカル・サポートの財務状況や事業の安定性についても定期的にチェックすることにした。

「契約書にも、業者が倒産した場合や事業撤退した場合の対策を明記するようにしよう。」藤井は契約書の見直しを指示した。

さらに、藤井は内部のレセプト作成能力を維持することの重要性を再認識した。スタッフの教育を強化し、必要な知識や技術を持つ人材を育成することで、外部依存を最小限に抑えた。また、緊急対応計画を策定し、業者が突然業務を停止した場合にも迅速に対応できるように準備を整えた。

「代替業者のリストや内部対応策を準備しておくことで、万が一の事態にも備えることができる。」藤井は幹部たちに強調した。

数か月後、東都メディカルクリニックは再び平穏な日常を取り戻していた。藤井は外注による効率化の効果を実感しつつ、リスク管理の重要性を改めて認識していた。

「外注にはリスクが伴う。しかし、適切な管理と対策を講じれば、そのメリットを最大限に引き出すことができる。」藤井はそう考え、未来を見据えていた。

この経験を通じて、藤井は一つの教訓を得た。リスクは避けられないが、それを適切に管理することで、組織はより強く、より効率的になるのだ。こうして、東都メディカルクリニックは新たなステージへと進んでいった。