Vol.725 自由診療への挑戦と保険診療の魅力

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クリニック奮闘記

2024.07.30

クリニック奮闘記

Vol.725 自由診療への挑戦と保険診療の魅力

皮膚科クリニックを経営する院長先生から、保険診療の診療単価が引き下げられる可能性を懸念し、自由診療へのシフトを検討しているという相談をよく受けます。確かに、自由診療は価格設定や患者サービスに対するメニューの自由度が高いですが、明確な方針と実行プランがなければ、経営が迷走する可能性もあります。本稿では、そんな院長先生の苦悩と経営の課題についてご紹介します。

診療所の待合室に広がる柔らかな光が、ゆったりとした時間の流れを感じさせていました。川上院長は、窓の外に広がる景色を眺めながら、次の診療について思いを巡らせていました。長年、地域に根ざした保険診療を中心に診療所を運営してきたのですが、近年の診療報酬の引き下げにより、経営の見直しを迫られています。

「どうすればいいんだろう...」川上院長は自問自答しながら、机の上に積まれた書類に目を落としました。そこには、診療報酬改定の詳細が書かれた報告書がありました。医療の現場では保険診療の重要性は変わりません。しかし、経営という視点から見ると、自由診療に軸足を移すことが必要だと感じ始めていたのです。

その夜、川上院長はデスクに向かい、新たな経営戦略を模索するために資料を読み漁っていました。自由診療の導入はリスクが伴いますが、成功すればクリニックの財務状況を大きく改善する可能性があります。彼は、患者に提供できる新しい自由診療メニューを考えてみました。

「例えば、美容皮膚科の治療やアンチエイジングの施術なんかが考えられるな...」川上院長は、自分の得意とする領域と患者のニーズを考慮しながら、頭の中で新しいサービスのアイデアを膨らませ、様々な医療機器の導入を検討し始めました。しかし、営業の方法や具体的な戦略が浮かびません。院長は、これまでの保険診療に慣れ親しんだ自分にとって、自由診療へのシフトは大きな挑戦であることを痛感しています。

川上院長は信頼する経営コンサルタントの佐藤氏に相談を持ちかけました。佐藤氏は医療業界の経営に詳しく、多くのクリニックの経営改善を手掛けてきた実績を持っています。

「川上先生、自由診療へのシフトは確かにリスクがありますが、計画的に進めれば大きな成果を得ることができます」と佐藤氏は冷静に語り始めました。「まずは、市場調査を行い、患者さんが求めている自由診療のニーズを把握することが重要です。その上で、マーケティング戦略を立てて、ターゲット層にアプローチすることが成功の鍵となります。」

川上院長は、佐藤氏の言葉に大きくうなずきました。「具体的には、どのように進めればよいのでしょうか?」

「まず、地域の競合クリニックの状況をリサーチしましょう。どのような自由診療メニューを提供しているのか、価格帯はどうなのかを把握します。そして、自院の強みを活かした独自のメニューを開発しましょう。」佐藤氏は、次々と具体的なステップを説明していきました。

数ヶ月後、川上院長のクリニックでは新たな自由診療メニューがスタートしました。美容皮膚科の施術や、最新のアンチエイジング治療など、患者にとって魅力的なメニューが揃いました。新たなサービスを広く知ってもらうために、ウェブサイトのリニューアルやSNSを活用した情報発信も行いました。

「先生、最近の施術メニュー、すごく評判いいですよ!」受付のスタッフが嬉しそうに報告してきました。患者の反応も上々で、予約が増えていくのを実感するたびに、院長の胸には希望が芽生えていきました。

川上院長は、保険診療と自由診療のバランスを取りながら、クリニックの経営を続けていく決意を新たにしました。自由診療のリスクを理解し、慎重に進めることで、経営の安定化を図ることができると確信し始めました。

これからも患者さんの笑顔と健康を守り続けるために、最善を尽くしていこうと、川上院長は心の中でそう誓いながら、新たな挑戦とともに、クリニックの未来は明るい光に包まれているように感じていたのでした。