2024.08.28
クリニック奮闘記
Vol.731 クリニックの事業承継物語 part3
3日目: 信頼を取り戻すための挑戦
佐藤医師は、経営者としての自分を奮い立たせ、クリニックの信頼を取り戻すために奮闘することを決意した。彼は田中医師が築いた信頼を継承し、自らの診療スタイルを加味して、地域住民に再びクリニックに足を運んでもらえるよう努めることにした。
まず、彼は診療所のスタッフと一丸となって取り組むことの重要性を認識し、退職したスタッフの代わりに新たな人材を採用することから始めた。経験の浅い新人スタッフが多かったが、彼らの教育に時間をかけ、クリニックの理念や地域医療の重要性を伝えることに注力した。
また、佐藤医師は地域住民とのコミュニケーションを重視し、診療以外の活動にも積極的に参加するようになった。地域のイベントや健康相談会を開催し、住民との交流を深めることで、少しずつ信頼を取り戻していく姿勢を見せた。このような活動を通じて、彼は「新しい医師」という印象を払拭し、「地域に根差した医師」としての信頼を得ようと努めた。
特に在宅診療においては、田中医師のスタイルを踏襲しながらも、佐藤医師ならではのアプローチを取り入れた。例えば、患者やその家族とのコミュニケーションを大切にし、医療的な支援だけでなく、生活全般にわたるサポートも行うようにした。このような姿勢が徐々に評価され、地域住民からの信頼が回復し始めた。
また、クリニックの評判を高めるために、地元のメディアや広報活動にも力を入れた。診療内容やクリニックの取り組みを積極的に発信することで、クリニックの存在感を再び強めていった。
そして、ある日、佐藤医師は診察室で一人の患者から言われた言葉に心を打たれた。「最初は不安だったけれど、先生のおかげでまた安心して通えるようになりました」。その言葉は、佐藤医師にとって大きな励みとなり、これまでの苦労が報われた瞬間でもあった。
このようにして、少しずつではあるが、佐藤医師はクリニックの信頼を回復させることに成功しつつあった。しかし、まだ完全に問題が解決したわけではなく、経営の不安定さは残ったままであった。これからも挑戦は続くのだ。