Vol.744 クリニック経営における財務知識の欠如が招く破綻物語

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クリニック奮闘記

2024.09.17

クリニック奮闘記

Vol.744 クリニック経営における財務知識の欠如が招く破綻物語

ある小さな内科クリニック

街の片隅に佇む、こじんまりとした内科クリニック。院長である佐藤先生は、長年の臨床経験と患者への深い愛情を胸に、地域の人々の健康を守っていました。佐藤先生は医療の専門家であり、患者を診ることに喜びを感じていました。しかし、経営に関しては専門外であり、日々の診療に追われるあまり、クリニックの財務状況を把握することなく日々を過ごしていました。

はじめの兆候

クリニックの経営は順調に見えましたが、少しずつ異変が起き始めていました。薬剤費や医療機器の購入費用が膨らみ、家賃や給料の支払いなどの資金繰りに頭を抱えるようになっていました。患者からの診療費の未収も増えています。佐藤先生は、これらの状況を「一時的なもの」と楽観視し、深刻に受け止めていませんでした。

損益計算書と貸借対照表

クリニックの経営状況(資金繰り)が悪化している中、銀行に運転資金の融資依頼をしていたのですが、審査の段階で断られていました。焦った佐藤先生は、初めて会計士に相談することにしました。会計士から渡された損益計算書と貸借対照表を見た佐藤先生は、その複雑さに頭を悩ませました。

損益計算書には、クリニックの収入と支出が詳細に記載されていましたが佐藤先生には、どの項目が問題なのか、どうすれば収益を上げることができるのか、全く理解できませんでした。貸借対照表には、クリニックの資産と負債が一覧表示されていました。しかし、佐藤先生は、これらの数字が何を意味しているのか、全く把握できていませんでした。

経営の危機

会計士の説明を聞いて、佐藤先生は初めて自分のクリニックの経営状況の深刻さを認識しました。長年、医療に携わってきた佐藤先生にとって、財務知識の欠如は大きな痛手でした。しかし、時すでに遅く、クリニックの経営状況は厳しい状況に追い込まれています。

教訓

この物語は、医療の専門家であっても、経営に関する知識がなければクリニックを存続させることが難しいことを示しています。損益計算書や貸借対照表といった財務諸表を理解し、自院の財務状況を把握することは、クリニック経営において不可欠です。

クリニック経営者が財務知識を身につけることの重要性

  • 早期の経営危機の察知: 財務諸表を分析することで、経営状況が悪化している兆候を早期に察知することができます。
  • 適切な経営判断: 財務状況を把握することで、適切な経営判断を行うことができます。例えば、収益を増やすための施策を講じたり、不要な支出を削減したりすることができます。
  • 銀行からの資金調達: 銀行は、クリニックの財務状況を重視して融資の可否を判断します。財務諸表がしっかりしていれば、銀行からの融資を獲得しやすくなります。
  • 事業の継続性: 財務知識を身につけることで、クリニックの事業を継続させることができます。

まとめ

医療の専門家であることは素晴らしいことですが、クリニック経営者として成功するためには、財務知識を身につけることも重要です。損益計算書や貸借対照表といった財務諸表を理解し、自社の財務状況を把握することで、クリニックの安定的な経営に繋がります。

 

以上を踏まえて以下の通りの改善策を検討していきます。改善のための魔法の杖はありませんが、再建に向けての経営視点としてまとめておきます。

佐藤先生のクリニック経営改善のための施策

佐藤先生のクリニックが抱えている問題点として、財務状況の悪化が挙げられます。これを改善するためには、以下の施策を検討する必要があります。

1. 財務状況の徹底的な分析

  • 会計士や税理士への相談: 専門家に見てもらい、損益計算書や貸借対照表を詳細に分析してもらうことが重要です。どこで費用がかかりすぎているのか、どの収入源を増やすべきかなどを具体的に把握します。
  • 過去のデータとの比較: 過去のデータと比較することで、どこから収益が減少し、どこで費用が増加しているのかを把握できます。
  • キャッシュフローの分析: 現金の出入りを把握し、資金繰りの改善策を検討します。

2. 収益増のための施策

  • 新規患者の獲得:
    • 地域への貢献活動(健康講座など)
    • ホームページやSNSでの情報発信
    • 紹介制度の導入
    • 診療科目の見直し(地域ニーズに合った科目の追加)
  • 既存患者の囲い込み:
    • 患者満足度向上のための取り組み(丁寧な説明、待ち時間短縮など)
    • リピート率向上のためのプログラム(健康診断、予防接種など)
    • 患者向けアプリの導入
  • 診療報酬の見直し:
    • 診療報酬点数の見直し
    • 診療時間の見直し
    • 診療内容の見直し

3. 費用の削減

  • 人件費:
    • 人員配置の見直し
    • 外注化できる業務の検討
    • パートタイムスタッフの活用
  • 薬剤費:
    • ジェネリック医薬品への切り替え
    • 薬剤の使用量の削減
  • 医療機器費:
    • 医療機器のリース契約の見直し
    • 不要な医療機器の売却
  • 光熱費:
    • 省エネ対策
    • LED照明への切り替え
  • 事務用品費:
    • 紙の使用量の削減
    • 電子化によるペーパーレス化

4. 経営効率化

  • IT化の推進:
    • 電子カルテの導入
    • オンライン診療の導入
    • 予約システムの導入
  • 業務の効率化:
    • 事務作業の標準化
    • スタッフ間の連携強化
  • 経営計画の策定:
    • 中長期的な視点で、クリニックの将来像を描きます。
    • 目標を設定し、定期的に進捗状況を確認します。

5. 外部からの支援

  • 経営コンサルタントの活用:
    • 専門家の視点から、客観的なアドバイスを受けることができます。
  • 金融機関との連携:
    • 融資の交渉や、資金繰りに関する相談を行います。
  • 医療経営に関するセミナーや勉強会への参加:
    • 最新の情報やノウハウを学ぶことができます。

その他

  • スタッフとのコミュニケーション:
    • スタッフの意見を聞き、モチベーションを高めます。
  • 患者とのコミュニケーション:
    • 患者からの意見や要望を聞き、サービスの改善に繋げます。
  • 地域社会との連携:
    • 地域の医療機関や介護施設との連携を強化します。

重要なのは、これらの施策を単独で行うのではなく、複合的に行うことです。

具体的な施策を決める際には、以下の点を考慮する必要があります。

  • クリニックの規模と診療科目:
  • 地域の特性:
  • 患者のニーズ:
  • スタッフのスキル:

これらの施策を実行していく上で、困難な点や疑問点があれば、会計士や税理士、経営コンサルタントなどの専門家に相談することをお勧めします。

佐藤先生のクリニックが、これらの施策を実行することで、再び健全な経営を取り戻せることを願っています。