2024.11.11
クリニック奮闘記
Vol.783 特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料への移行
2024年度診療報酬改定に伴う、内科系診療所における特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料への移行は、多くのクリニックに大きな影響を与えたことと思います。
クリニック現場で起こった具体的な事例としては、以下のようなものが考えられます。
診療内容の見直しと体制整備
- 生活習慣病管理への注力:
- 従来、特定疾患療養管理料が中心であった診療から、生活習慣病管理料に重点を移すため、生活習慣病に関する問診や検査項目を充実
- 栄養指導や運動療法などの生活習慣改善指導を強化し、患者への指導体制を構築
- 医療従事者の教育:
- 生活習慣病管理料の算定基準や、生活習慣改善指導に関する知識・スキル向上のための研修会を実施
- 栄養士や運動療法士など、専門職との連携を強化し、チーム医療体制を構築
- ITシステムの導入:
- 患者情報の管理や、生活習慣病管理に必要なデータの収集・分析を行うため、電子カルテシステムや健康管理アプリなどを導入
患者への対応の変化
- 説明の強化:
- 従来の特定疾患療養管理料から、生活習慣病管理料への移行に伴う診療内容の変化について、患者に丁寧に説明
- 生活習慣病の予防と管理の重要性について、患者への啓発活動の実施
- 患者自身が生活習慣改善に取り組めるよう、個別指導やグループ指導を実施
- 患者参加型の医療:
- 患者自身が治療目標を設定し、生活習慣改善に取り組むことを促すため、患者参加型の医療を実践
- 患者からの相談に柔軟に対応し、患者中心の医療を提供できる体制に向けての人員配置
経営への影響
- 収入の変化:
- 特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料への移行に伴い、収入が減少したクリニックもあれば、生活習慣病管理に力を入れることで新規患者が増加し、収入が安定したクリニックもある。自院の患者属性と今後の方向性を見極めた上での戦略的な意思決定が必要である
- コストの増加:
- 生活習慣病管理に必要な人員の確保や、ITシステムの導入など、コストが増加したクリニックも少なくない
- 経営戦略の見直し:
- 診療範囲の拡大により対象患者を拡大することで、減収分のカバーを検討するクリニックもある。ただし提供できる医療サービスの質的担保を優先する必要があるため、増収一辺倒の方針は再考すべきである。
その他
- 地域連携の強化:
- 地域の薬局や保健師、栄養士などとの連携を強化し、地域包括ケアシステムの一員として活動するクリニックも増加
- 予防医療へのシフト:
- 生活習慣病の予防に力を入れることで、予防医療へのシフトを図るクリニックも増加
- その場しのぎの対策ではなく、中長期的視野に立って、『やりたかった医療は何か?』が問われる改定ではなかったかと思われます。今一度、クリニックの戦略について考えてみましょう。