2025.01.15
クリニック奮闘記
Vol.828医療機関に対するSNS誹謗中傷への対応事例
「小さな町の総合病院、大きな決意」
かつて、人口10万人のある地方都市に「あすなろ総合病院」はありました。地域住民に愛され、長年地域医療を支えてきた老舗の病院です。しかし、近年、SNSの普及とともに、病院に対する根拠のない誹謗中傷が散見されるようになりました。
ある日、病院の評判を貶めるような書き込みが、匿名のアカウントによって複数のSNSに投稿されました。内容は、医師の診断ミスや医療行為の怠慢などを中傷するもので、病院の信用を大きく損なうものでした。病院側は、この事態を深刻に受け止め、対策に乗り出すことにしました。
1. 事実関係の確認と証拠集め
まず、病院側は、弁護士とともに、SNS上の書き込みが事実無根であることを証明するための証拠集めを行いました。患者のカルテや医療記録などを精査し、書き込み内容が虚偽であることを立証する資料を作成しました。
2. 削除要請と発信者情報の開示請求
次に、SNSの運営会社に対して、該当の書き込みの削除を要請しました。しかし、匿名での投稿が多かったため、削除に応じてもらえないケースも少なくありませんでした。そこで、プロバイダー責任制限法に基づき、発信者情報の開示請求を行うことにしました。
3. 法的手段の実行
発信者情報が開示された後、病院側は、弁護士を通じて、発信者に対して内容証明郵便を送付し、名誉毀損と業務妨害で損害賠償を求める訴訟を提起しました。
4. 地域住民への説明と広報活動
訴訟を進める一方で、病院側は、地域住民に対して、今回の事件に関する説明会を開催しました。病院の対応や事実関係について丁寧に説明し、地域の理解を求めました。また、病院のウェブサイトや地域新聞を通じて、積極的に情報を発信しました。
5. 再発防止策
病院側は、今回の事件を教訓に、再発防止策を講じました。具体的には、SNSの監視体制を強化し、誹謗中傷を発見した場合には迅速に対応できるようにしました。また、患者からの意見や要望を積極的に聞き取り、医療サービスの向上に努めることで、患者との信頼関係を築き、新たな誹謗中傷を防ぐようにしました。
あすなろ総合病院の毅然とした対応により、裁判は病院側の勝訴で終結しました。また、地域住民からの信頼も回復し、病院は再び地域医療の中心的な役割を果たすことができるようになりました。
この事例から学ぶべきこと
- 迅速な対応が重要: 誹謗中傷を発見したら、迅速に対応することが重要です。放置すると、事態が拡散し、病院の評判を大きく損なう可能性があります。
- 証拠をしっかりと固める: 法的手段を取るためには、事実無根であることを証明するための証拠をしっかりと固める必要があります。
- 地域住民への説明が大切: 地域住民への説明会を開催したり、情報を発信したりすることで、地域の理解を得ることが重要です。
- 再発防止策を講じる: 今回の事件を教訓に、再発防止策を講じ、同様の事態を繰り返さないようにすることが重要です。
医療機関がSNS上の誹謗中傷に対処する際のポイント
- 弁護士に相談する: 法的な問題に関しては、弁護士に相談することが重要です。
- 証拠をしっかりと残す: 証拠となる資料は、しっかりと保管しておく必要があります。
- 冷静に対応する: 感情的にならず、冷静に対応することが大切です。
- 長期戦を覚悟する: 法的な手続きには時間がかかる場合があるため、長期戦を覚悟する必要があります。
SNS上の誹謗中傷は、医療機関にとって深刻な問題です。しかし、適切な対応を取ることによって、乗り越えることができます。この事例を参考に、あなたの病院・クリニックでも、万が一の場合に備えて、対策を講じておきましょう。
この文章は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的アドバイスではありません。具体的な問題については、弁護士にご相談ください。