Vol.936 完全自動化とホスピタリティの両立は可能か?

レセプト代行サービス メディカルタクト
TEL:06-4977-0265
お問い合わせ
backnumber

クリニック奮闘記

2025.06.30

クリニック奮闘記

Vol.936 完全自動化とホスピタリティの両立は可能か?

■はじめに 人口減少に伴い、医療現場では「人手不足」が常態化しつつあります。特に中小規模のクリニックでは、採用難・人件費の高騰・スタッフの定着率低下といった課題が重くのしかかっています。こうした背景のもと、クリニック経営においては業務の自動化が加速度的に進められており、「完全自動化クリニック」の構想すら現実味を帯びてきました。しかし、自動化が進む一方で、患者対応における"ホスピタリティ"はどこまで維持されるべきなのか。本レポートでは、クリニックの自動化の可能性とホスピタリティの共存について検討します。

■完全自動化の実現可能性 クリニックの業務は多岐にわたりますが、現時点で自動化可能な領域は以下のとおりです:

  1. 予約・問診の自動化:WEB予約・チャットボット・タブレット問診により、受付業務は大幅に削減可能。

  2. 会計・決済の自動化:キャッシュレス決済端末・自動精算機の導入で受付業務の多くを代替。

  3. 電子カルテ・診療補助:音声入力AIや診療補助AIにより、医師の負担も軽減可能。

  4. 処置の支援:一部の処置(採血・測定)においては医療用ロボットが導入されつつある。

これらを統合すれば、「診察室と処置室のみで構成された無人型クリニック」の構想も理論上は可能です。

■ホスピタリティの再定義 一方で、クリニックにおけるホスピタリティとは「笑顔での受付対応」や「不安への共感的対応」など、患者の心理的安心感を支えるものであり、これが失われた際の患者満足度低下は看過できません。しかし、ホスピタリティを"人的サービス"のみに限定して考える必要はありません。以下のように、テクノロジーによっても一定のホスピタリティは再現可能です。

  1. UXに優れたインターフェース:視覚的にわかりやすく、操作しやすいデザイン設計。

  2. 音声・動画による案内:AIコンシェルジュによるガイド、患者属性に合わせた丁寧な説明。

  3. リアルタイムチャットサポート:不安を感じた患者に対して、即座に対応する体制。

■ホスピタリティは本当に不要か? 結論から言えば、ホスピタリティは依然として重要です。むしろ、高齢化が進む社会では"テクノロジーの導入=冷たい"という印象を持たれるリスクがあり、だからこそ「テクノロジーにホスピタリティを宿らせる設計」が肝要となります。完全無人化が成立するのは、患者層が若年~中年の比較的ITリテラシーの高い地域・診療科(美容皮膚科、自由診療など)に限られ、外来診療や慢性疾患管理では依然として人的対応が一定数必要となるでしょう。

■今後の方向性 ホスピタリティを維持しつつ自動化を進めるには、以下の3つのアプローチが求められます:

  1. 人的接点の再定義:フルタイム常駐ではなく、必要な時にだけ人が対応する「選択的人的接点」モデル。

  2. データを活用した個別対応:過去の診療履歴・性格傾向に基づくパーソナライズドサービス。

  3. 患者教育の充実:患者自身が新しい受診スタイルに適応できるよう、丁寧な事前ガイドとフォローを実施。

■まとめ 完全自動化クリニックは理論的には成立可能です。ただし、ホスピタリティを単に「人によるサービス」と定義するのではなく、「患者の不安を軽減し、快適に医療を受けられる環境を提供すること」と再定義することが重要です。これにより、テクノロジーとホスピタリティは対立概念ではなく、共存可能な概念として融合していくことが可能となります。