2025.07.14
クリニック奮闘記
Vol.945 クリニックのスタッフを教育の問題点の整理と対応策の検討
■はじめに スタッフ教育はクリニック運営の中核を担う要素であり、教育の質と継続性が業務の安定性・効率性に直結します。しかし、実際の現場では多くの問題に直面しており、それらを整理し、現実的な対応策を講じることが求められています。本記事では、教育の現場でよく見られる問題点を明確化し、それに対する具体的な解決策を提案します。
■問題点1:教育担当者の不在・不明確 教育を担うべきリーダーが不在、あるいは曖昧な場合、教育が属人的・場当たり的になりやすくなります。 【対応策】 ・教育リーダーの任命と役割の明確化 ・教育担当者には評価やインセンティブを連動させ、モチベーションを向上 ・新人教育マニュアルの作成と、その運用の責任者を設定
■問題点2:教育の標準化がなされていない 教える内容や方法に一貫性がなく、スタッフによって習得レベルにバラつきが出る 【対応策】 ・教育カリキュラムと教材を整備(PDF、動画教材など) ・チェックリスト形式で進捗管理を行い、到達度を可視化 ・院内で教育内容を共有・評価する文化を育成
■問題点3:時間的余裕がなく教育の優先順位が低い 日々の業務に追われ、教育時間を確保できない状況が常態化 【対応策】 ・診療後や昼休みに15~30分の「短時間教育セッション」を設ける ・月1回の集合研修はスケジュールとして事前に固定 ・eラーニングや動画を活用し、時間の制約を超えた教育の仕組みを整備
■問題点4:スタッフのモチベーションが低い 「教えられるよりも、今の仕事が優先」と感じるスタッフも多く、学習意欲が伴わない 【対応策】 ・教育への参加と業務成果を人事評価に反映 ・達成度に応じた報奨制度(資格取得手当や表彰) ・教育によって得られる「成長実感」を可視化する(振り返りシート、面談)
■問題点5:院長の教育に対する関心が薄い 院長が教育を「現場に任せきり」にしてしまうと、教育の質と継続性が低下する 【対応策】 ・院長自身が教育計画に関与し、方針をスタッフと共有 ・月1回の教育レビュー会議に院長も参加 ・「教育は経営戦略の一部」として明文化し、全体方針に組み込む
■問題点6:現場のOJTが非効率で、教える側の負担が重い 業務をこなしながらのOJTは、教える側・教わる側双方に負担が大きい 【対応策】 ・OJTとOFF-JTを組み合わせ、OJTの比率を減らす ・OJT時には観察記録とフィードバックシートを活用し、短時間でも効果的に ・外部研修との併用により、教える側の負担を軽減
■まとめ 教育は「やる気と仕組み」の両方が揃って初めて成果が出ます。クリニックにおけるスタッフ教育は、属人的なOJTや現場任せの体制から脱却し、制度化された仕組みとして育てていく必要があります。問題点の背景を正しく理解し、計画的・継続的な対応を行うことで、教育は「負担」から「成長のエンジン」へと変わるはずです。