2025.07.28
クリニック奮闘記
Vol.957 M&Aと医療法人連携で生き残る!クリニックの規模化戦略
医療業界は厳しい経営環境の中で、個人クリニックの淘汰が進んでいます。とくに歯科業界の倒産増加が示すように、競争激化と市場の飽和は避けられません。こうした状況は一般医科診療所にも同様に波及すると予測され、今後10年以内に「規模化」と「法人化」が生き残りのカギとなるでしょう。
本記事では、クリニック経営における規模化戦略としてのM&A(合併・買収)と医療法人連携のメリット、実際の活用事例、注意点を詳しく解説します。
1. クリニック規模化の必要性
1-1. 経営環境の変化と規模の経済
医療機関を取り巻く環境は年々複雑化し、診療報酬の変動、医療人材の確保困難、最新設備の導入費用増加、法令遵守の強化など、多様な課題が増えています。個人医院単独で対応するには限界があり、規模の経済を活かした運営体制の構築が不可欠です。
1-2. 固定費負担の軽減
規模が大きくなることで人件費や管理コストなどの固定費を分散でき、経営の安定化が図れます。複数の診療所を統合すれば、採用・教育の効率化や購買力の強化も期待できます。
2. M&Aの基本と医療法人連携のメリット
2-1. M&Aとは
M&Aとは、企業(クリニック)同士の合併・買収を指し、クリニックの規模拡大や事業承継を目的に活用されます。医療法人の持分譲渡、診療所譲渡、業務提携など多様な形態があります。
2-2. 医療法人連携の特徴
医療法人間での連携は、経営資源の共有や地域医療連携の促進に有効です。特に複数医院が法人として統合することで、財務基盤の強化や人材・設備の効率的運用が可能になります。
3. 成功事例:内科クリニックの医療法人連携による経営安定化
東京都内の内科クリニックAは、近隣の複数の医院と医療法人を組成し連携しました。この連携により、
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医師や看護師のシェアリングで人材不足を解消
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設備やシステムの共有によるコスト削減
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複数院合同の研修や管理体制の強化
が実現。結果として経営の安定化と診療サービスの質向上に成功しました。
3. M&A・連携における注意点
3-1. 経営理念や文化の違い
M&Aや法人連携では、経営理念や職場文化の違いが摩擦を生むことがあります。双方の価値観を擦り合わせることが重要です。
3-2. 契約・法務面の慎重な対応
譲渡契約や医療法関連の規制遵守には専門知識が必要です。税務面も含め、専門家の助言を受けながら慎重に進めましょう。
3-3. スタッフの意識改革
合併後はスタッフの役割変化や業務プロセスの見直しが避けられません。丁寧な説明と教育により不安を払拭し、組織一体感を醸成することが重要です。
4. まとめ
これからのクリニック経営は「規模化」と「法人化」を軸に考えることが不可欠です。M&Aや医療法人連携は、固定費削減、人材確保、サービス品質向上の効果的な手段であり、長期的な経営安定につながります。
ただし、経営理念の共有や法務面の対応、スタッフの意識改革といった課題も存在します。これらを乗り越えるために、専門的なサポートを活用することが成功のカギとなります。