2025.08.18
クリニック奮闘記
Vol.968 診療単価の向上策
「去年の収益が思うように伸びなかったんだ。」
そうこぼしたのは、ある内科クリニックの院長先生でした。地域に根ざして20年、患者数も安定しているのに、年末の決算を見て愕然としたといいます。原因を探ると、レセプト請求の算定漏れや記載不備が多く、本来得られるはずの診療報酬を取りこぼしていたことが分かりました。スタッフは一生懸命働いているものの、診療単価が伸びず、結果的に収益が頭打ちになっていたのです。
「患者数を増やさないといけない」と考えていた院長先生ですが、実際には患者一人あたりの診療単価を上げる工夫こそが、持続的な収益改善の第一歩でした。
診療単価が伸びない理由
診療単価が伸びない背景には、いくつかの共通した要因があります。
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レセプト精度の低さ
算定漏れや入力ミスで、診療報酬が正しく請求されていない。 -
診療メニューの単調さ
必要な検査や処置を提案せず、結果的に低単価で終わってしまう。 -
時間効率の悪さ
診療が流れ作業になり、患者に必要な説明や提案を行う余裕がない。
これらはいずれも、日々の忙しさの中で「仕方ないこと」として見過ごされがちですが、改善できれば大きな収益改善につながります。
内視鏡専門クリニックの事例
内科の中でも内視鏡専門クリニックは、検査や処置の内容によって診療単価が大きく変わる診療科です。
あるクリニックでは、胃カメラ検査の算定に関して加算の算定漏れが多く見つかりました。例えば、鎮静下での内視鏡検査や病理検査を伴う場合、本来は診療報酬が高くなるはずですが、レセプト請求での入力が漏れていたのです。
こうした状況に気づかず「患者数を増やせばいい」と集患に力を入れても、収益改善は限定的です。しかし、**レセプト外注(レセプトアウトソーシング)**を導入したことで、算定漏れが減り、結果的に一人あたりの診療単価が向上しました。さらに、検査説明のフローを見直し、必要なオプション検査(ピロリ菌検査や大腸ポリープ切除など)を積極的に提案するようになったことで、収益は前年より15%増加しました。
整形外科クリニックの事例
整形外科では、リハビリや注射などの処置をどう組み合わせて診療報酬に反映させるかが重要です。
ある整形外科の副院長先生は、リハビリの算定ルールが複雑で、スタッフ任せになっていたため、レセプト精度が低く減点が多いという悩みを抱えていました。患者数は増えているのに収益が増えない理由は、単価の低さにありました。
このクリニックでは、レセプトアウトソーシングを活用することで改善に取り組みました。外部の専門スタッフがレセプトを精査し、減点や算定漏れを防ぐ体制を整えた結果、請求の正確性が向上。さらに、リハビリに関して「初期評価」や「再評価」のタイミングを適切に管理する仕組みを整えたことで、単価は着実に上昇しました。経営分析の結果、1件あたりの診療報酬が前年比10%アップし、固定費の上昇を吸収できるだけの余裕が生まれたのです。
レセプト精度が診療単価を左右する
これらの事例から分かるのは、診療単価を上げるためにはレセプト精度の改善が不可欠だということです。
医師がどれだけ適切に診療しても、レセプト請求で算定漏れや誤りがあれば収益に直結しません。つまり、「診療報酬の取りこぼしを防ぐこと」が、最も確実な診療単価向上策なのです。
しかし、レセプト業務は複雑で専門知識が求められます。スタッフ任せにすると精度が下がり、医師自身がチェックすれば膨大な時間が奪われます。ここで有効なのが**レセプト外注(レセプトアウトソーシング)**です。専門性の高い外部パートナーに任せることで、請求精度を維持しつつ、医師やスタッフは本来の診療業務に集中できます。
成果と希望、そして次の一歩へ
診療単価の向上は「患者数を増やすよりも実現しやすい収益改善策」であり、しかも持続的な効果があります。
内視鏡専門クリニックのように検査や加算の算定を見直すこと、整形外科のようにリハビリの評価や請求の精度を高めること、いずれもレセプト精度の向上によって具体的な成果が得られることが示されました。
経営者である院長・副院長にとって大切なのは、「数字に表れない努力」ではなく「数字に直結する改善策」に投資することです。レセプト請求の見直しや外注化は、診療単価を高め、安定した収益基盤をつくる最初の一歩となるでしょう。
そして、診療単価が上がれば、次の課題は「診療時間・診療効率の最適化」です。診療の質を維持しつつ、効率的に運営することで、さらなる収益改善が見えてきます。