Vol.976 「内部と外部の人的リソースを組み合わせるクリニック経営|ハイブリッド型活用の成功ポイント」

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クリニック奮闘記

2025.08.25

クリニック奮闘記

Vol.976 「内部と外部の人的リソースを組み合わせるクリニック経営|ハイブリッド型活用の成功ポイント」

はじめに

これまで第1部で人的リソース全体像を整理し、第2部で内部リソース、第3部で外部リソースをそれぞれ詳しく見てきました。本稿では、内部と外部のリソースをどのように組み合わせて活用するか(ハイブリッド型運営) に焦点を当てます。人的リソースの不足が慢性化するなかで、両者をバランス良く配置することが、持続可能なクリニック経営に不可欠となっています。


1. ハイブリッド型活用の必要性

クリニック経営における人的リソース課題は、単純に「人を増やす」ことで解決できるものではありません。採用難、教育不足、離職率の高さなどに対応するには、内部と外部のリソースを組み合わせて柔軟に対応する必要があります。

  • 内部リソースだけに依存するリスク

    • 属人化が進み、退職者が出ると業務が滞る

    • 新人教育の負担が大きい

  • 外部リソースだけに依存するリスク

    • コスト増加による経営圧迫

    • 院内文化が根付かず、サービスの一貫性が失われる

内部の安定性と外部の柔軟性を掛け合わせることが最適解 となります。


2. 業務分担の最適化

内部と外部を組み合わせる際には、業務分担を明確にすることが重要です。

  • 内部に任せるべき業務

    • 患者対応、診療補助、医師・スタッフ間のコミュニケーションなど「信頼」や「一貫性」が求められる業務

    • 医療安全に直結する業務

  • 外部に任せるべき業務

    • レセプト請求、会計、清掃など「定型化・標準化」できる業務

    • 繁忙期の人員補充や専門知識が必要な領域(労務、法務、ICTなど)

具体例

  • 医療事務スタッフが患者対応に集中できるよう、レセプト請求は外部委託。

  • 看護師が看護業務に専念できるよう、検査や雑務の一部を派遣スタッフに依頼。


3. ハイブリッド型の成功事例

いくつかのクリニックでは、内部と外部をうまく組み合わせて成果を上げています。

  • 事例①:小児科クリニック

    • 受付スタッフは内部で採用し患者対応に専念。

    • レセプト請求は外部専門会社に委託。

    • 結果:患者満足度が向上し、スタッフの残業が大幅に削減。

  • 事例②:整形外科クリニック

    • 理学療法士など専門職は内部雇用で強化。

    • 清掃・備品管理は外部委託で効率化。

    • 結果:専門職のリテンション(定着率)が向上し、専門性の高い診療を継続。

  • 事例③:皮膚科クリニック

    • 医師・看護師は内部で確保しつつ、繁忙期には派遣スタッフを投入。

    • ICTツールを導入し、予約や問診を自動化。

    • 結果:待ち時間が短縮し、患者数増加に対応できた。


4. ハイブリッド型活用における注意点

内部と外部の融合を進めるうえで、以下の課題に注意が必要です。

  1. コミュニケーション不足:外部スタッフや業者が院内文化を理解できないと、業務の一貫性が損なわれる。

  2. 情報共有の不備:委託業務がブラックボックス化すると、ミスやトラブルが増加する。

  3. コストコントロール:外部委託費用が増えすぎると、経営を圧迫する。

解決策

  • 定期的なミーティングを設け、内部と外部の情報共有を徹底。

  • 業務マニュアルやチェックリストを共有し、誰が見ても業務が遂行できる体制を整える。

  • コスト分析を定期的に実施し、費用対効果を検証する。


5. 今後の展望

ハイブリッド型の人的リソース活用は、単なる一時的な対応策ではなく、今後のクリニック経営におけるスタンダードとなる可能性があります。

  • ICT導入により、さらに外部委託可能な業務が増加

  • 働き方改革により、柔軟な雇用形態が広がる

  • 地域包括ケアの進展で、外部との連携が必須に

つまり、内部と外部の境界を柔軟に行き来することが、次世代のクリニック経営の鍵 となります。


まとめ

ハイブリッド型活用は、内部の安定性と外部の柔軟性を組み合わせる戦略です。業務分担を最適化し、内部には「患者に直結する業務」を、外部には「定型的・専門的業務」を任せることで、効率と品質を両立させることが可能です。その際には、コミュニケーション・情報共有・コスト管理という3つの課題に注意しつつ運営することが成功の鍵となります。

次回の第5部では、AIやDXの進展、地域連携などを視野に入れた 人的リソース戦略の未来 について展望します。