2025.08.25
クリニック奮闘記
Vol.975 「クリニック外部リソースの活用戦略|派遣・委託・専門家コンサルタントのメリットと課題」
はじめに
第1部ではクリニックの人的リソースを内部・外部に分けて整理し、第2部では内部リソースについて詳しく考察しました。本稿では、外部リソース に焦点を当てます。外部リソースとは、クリニックが直接雇用していない人材やサービスを指し、派遣スタッフ、業務委託、専門家コンサルタント、さらにはICTシステムなど多岐にわたります。外部リソースを適切に活用できるかどうかは、クリニックの経営効率と患者満足度に大きな影響を与えます。
1. 派遣スタッフ・パートタイム人材
人材派遣会社やアルバイト・パート勤務者を通じて確保する人材は、クリニックにとって柔軟性の高い外部リソースです。
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メリット
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欠員補充や繁忙期の即戦力確保が可能
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採用にかかる時間やコストを削減できる
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必要な時期に必要な人数だけ活用できる
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デメリット・課題
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院内のルールや文化を理解していないため教育コストがかかる
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長期的に定着しにくく、サービスの一貫性が保ちにくい
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派遣会社への手数料が発生し、人件費が割高になる場合がある
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活用のポイント:受付や雑務など即戦力が求められる業務に絞って配置することで効率的に活用できます。また、最低限の院内マニュアルを用意し、短期間でもスムーズに業務が行えるようにすることが重要です。
2. 業務委託(アウトソーシング)
クリニック運営では、多くの業務を外部に委託することが可能です。代表的なものは以下の通りです。
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清掃業務:衛生管理を専門業者に任せることで感染リスクを低減。
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検査業務:採血検査や画像診断を外部検査センターに委託。
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レセプト請求代行:診療報酬請求業務を専門会社に任せることで属人化を防止。
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会計・労務管理:税理士や社労士に外注することで法令遵守を徹底。
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メリット
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専門性の高い業務を効率的に処理できる
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院内スタッフの負担を軽減できる
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人件費の固定費化を防ぎ、変動費として管理できる
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デメリット・課題
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業務内容がブラックボックス化しやすい
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業者の質に依存するリスク
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内部スタッフとの連携不足によるトラブル
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活用のポイント:委託先の業者を定期的に評価し、フィードバックを行うことが重要です。また、業務フローを可視化して内部スタッフも理解できるようにすることで、トラブルを防ぎやすくなります。
3. コンサルタントや顧問
クリニックの経営は診療だけでなく、財務・労務・法務・人材育成など多岐にわたります。これらを院長やスタッフだけで管理するのは困難であり、外部の専門家の力を借りることが有効です。
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代表的な専門家
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医療経営コンサルタント
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税理士、社労士、弁護士
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医療機器やICTの導入アドバイザー
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メリット
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専門的な知識・経験を即座に活用できる
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経営者の意思決定をサポート
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法令遵守や制度改正への迅速な対応
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デメリット・課題
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顧問料・コンサルティング費用がかかる
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効果が見えにくい場合がある
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院内の実情を理解していないと机上の空論になりがち
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活用のポイント:単なる助言にとどまらず、院内に落とし込める実行支援まで依頼することが望ましいです。また、複数の専門家を組み合わせ、総合的なサポート体制を整えることが理想です。
4. ICT・DXサービス
人的リソースの一部を代替・補完する存在として、近年ではICT(情報通信技術)やDX(デジタルトランスフォーメーション)サービスの活用も進んでいます。
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具体例
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オンライン予約システム
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AI問診ツール
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電子カルテ・レセコンのクラウド化
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チャットボットによる患者対応
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メリット
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人材不足を補完できる
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患者の利便性が向上
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データ活用による経営改善が可能
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デメリット・課題
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導入コストやランニングコストがかかる
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高齢スタッフが操作に不慣れな場合がある
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システム障害時のリスク
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活用のポイント:人的リソースを完全に置き換えるのではなく、あくまで「補完」として導入することが重要です。ICTを導入することで浮いた時間を、患者対応やスタッフ教育に充てることが理想です。
5. 外部リソース活用における共通課題
外部リソースには多くの利点がありますが、以下のような課題も共通して存在します。
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コスト管理の難しさ:派遣料や委託費用が積み重なると経営を圧迫する。
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院内との連携不足:外部人材が院内文化を理解していない場合、サービス品質が低下する。
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情報管理リスク:外部に業務を委託することで、個人情報漏洩などのリスクが高まる。
これらの課題を解決するには、外部リソースを「単なる外注先」ではなく「パートナー」として位置づけ、密なコミュニケーションを取ることが重要です。
まとめ
外部リソースは、人的リソース不足に悩むクリニックにとって強力な支援手段となります。派遣スタッフや業務委託、コンサルタント、ICTサービスなどを上手に組み合わせることで、院内の業務効率を高め、スタッフの負担を軽減し、患者満足度を向上させることが可能です。しかし、コストや連携不足といった課題もあるため、適切なバランス感覚で活用することが求められます。
次回の第4部では、内部リソースと外部リソースをどう組み合わせるべきか、ハイブリッド型の人材活用戦略について考察します。