Vol.974 「クリニック内部リソースの活用法|医師・看護師・医療事務スタッフの役割と課題」

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クリニック奮闘記

2025.08.25

クリニック奮闘記

Vol.974 「クリニック内部リソースの活用法|医師・看護師・医療事務スタッフの役割と課題」

はじめに

前回の第1部では、クリニックの人的リソースを「内部リソース」と「外部リソース」に分けて整理しました。本稿では、そのうち 内部リソース(直接雇用されているスタッフ) に焦点を当てます。医師、看護師、医療事務、その他の専門職がどのように役割を果たしているのか、またその活用における課題と解決の方向性を考察していきます。


1. 医師(院長・勤務医)の役割と課題

クリニックの診療は医師を中心に展開されます。院長は診療だけでなく経営者としての責任も担い、勤務医は診療の幅を広げる役割を持ちます。

  • 役割

    • 患者診療の中心的存在

    • 診療方針の決定、専門性による差別化

    • スタッフの指導・教育

  • 課題

    • 経営と診療の両立が難しい

    • 働き方改革の流れで長時間労働が問題化

    • 勤務医の採用難と定着率の低さ

解決の方向性:院長は診療に集中できるよう、経営管理は事務長や外部コンサルタントに任せる体制を構築することが重要です。また、勤務医のキャリア支援や柔軟な勤務形態を導入することで定着率を高めることができます。


2. 看護師の役割と課題

看護師は診療補助から患者フォローまで幅広い役割を担い、患者満足度を左右する存在です。

  • 役割

    • 医師の診療補助、処置や検査対応

    • 患者への説明や心理的サポート

    • 院内の安全管理、感染対策

  • 課題

    • 他業種に比べ転職が多く、人材流動性が高い

    • 患者からの要求が強く、メンタル負担が大きい

    • 教育体制が整っていないクリニックでは新人育成が難しい

解決の方向性:業務分担を明確にし、事務作業をできる限り削減することで看護師が看護業務に集中できる体制を作る必要があります。さらに、院内での教育プログラムやメンタルサポート体制を整備することが効果的です。


3. 医療事務の役割と課題

医療事務は「クリニックの顔」とも言える受付業務と、診療報酬請求(レセプト業務)を担います。小規模なクリニックでは、電話対応から経理まで幅広い役割を果たすケースも珍しくありません。

  • 役割

    • 受付、会計、電話対応

    • レセプト業務(診療報酬請求)

    • 医師・看護師との連携、院内調整

  • 課題

    • 属人化のリスクが大きい(経験者しか対応できない業務が発生)

    • 患者対応におけるクレームやトラブル対応の負担

    • 業務の幅が広いため、採用や教育が難しい

解決の方向性:レセプトや経理業務の一部を外部委託することで属人化を防ぎ、事務スタッフには患者対応や院内調整に専念させることが効果的です。また、マニュアル整備や業務の標準化が欠かせません。


4. リハビリスタッフや放射線技師など専門職の役割

診療科によっては、理学療法士・作業療法士、放射線技師、臨床検査技師といった専門職が在籍します。これらの職種は医師の診断や治療を技術面から支える存在です。

  • 役割

    • 専門的な検査・リハビリ提供

    • 医師の診断補助

    • 患者への生活指導やアドバイス

  • 課題

    • 人材不足(特に地方)

    • 医師とのコミュニケーション不足により能力を十分に発揮できない

    • 業務範囲の曖昧さ

解決の方向性:専門職が力を発揮できるように業務プロセスを明確にし、医師との情報共有を徹底することが求められます。ICTを活用した情報共有ツールの導入も有効です。


5. 内部リソース活用における共通課題

職種ごとに異なる課題がある一方で、クリニック全体の内部リソース活用に共通する課題もあります。

  1. 採用・定着の難しさ:競争の激しい医療業界では、人材の流動性が高く、採用しても長続きしないことが多い。

  2. 教育・育成の不足:小規模クリニックでは研修体制を整える余裕がなく、スタッフが自己流で業務を進めがち。

  3. モチベーション管理:給与だけでなく、やりがいや働きやすさをどう提供するかが課題。

  4. 業務の属人化:経験者に依存しすぎると、その人が退職した際に業務が滞るリスクが高まる。


まとめ

内部リソースはクリニックの「核」となる存在です。医師・看護師・事務スタッフ・専門職がそれぞれの役割を果たすことで、診療が成り立っています。しかし、その活用には採用や教育、モチベーション管理といった課題が常につきまといます。これらを解決するためには、業務の標準化、教育体制の整備、外部リソースとの適切な役割分担が不可欠です。

次回の第3部では、外部リソースに焦点を当て、派遣スタッフ、業務委託、コンサルタントなどの活用方法と注意点について詳しく解説していきます。