Vol.979 チームでつくるクリニック経営:一人経営からの脱却

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クリニック奮闘記

2025.09.01

クリニック奮闘記

Vol.979 チームでつくるクリニック経営:一人経営からの脱却

はじめに

地域医療を担うクリニックは、患者との距離が近く、柔軟で迅速な対応が求められる場です。しかし一方で、経営の大部分を院長一人が背負ってしまうケースも少なくありません。診療、スタッフ管理、会計、そしてレセプト業務に至るまで、院長の負担が過大になることは、経営の持続性を揺るがす大きなリスクとなります。

そこで注目すべきなのが、「チームで運営するクリニック経営」です。医師、看護師、医療事務スタッフがそれぞれの役割を果たし、特にレセプト業務をチームで共有することで、効率化と安定化を実現できます。本稿では、一人経営から脱却し、チームによるクリニック経営を確立するための具体的なアプローチを考えていきます。


院長ワンオペ経営の限界

中小規模のクリニックでは、院長が「診療」と「経営」の両方を同時に担うことが一般的です。しかし、外来診療をこなしながらレセプトを点検し、スタッフのシフト管理や患者対応のクレーム処理まで行うとなると、時間も体力も限界に達します。

特にレセプト業務は専門知識と正確さが求められる作業です。点検を院長が一人で担っている場合、次のような問題が生じやすくなります。

  • 診療後の夜間や休日に業務が集中し、過重労働となる

  • ミスを見落としやすく、返戻や減点のリスクが高まる

  • 業務が属人化し、院長が不在だと請求業務が止まってしまう

こうした状況は、経営そのものの不安定化につながります。


チーム経営のメリット

一人経営からチーム経営へと移行することで、クリニックにはさまざまなメリットがもたらされます。

  1. 業務の分担による効率化

    • レセプト点検を医療事務スタッフが主体的に行い、院長は最終確認に専念できる

    • 看護師が診療補助や患者説明に注力し、医師の負担を軽減する

  2. 情報共有によるミスの防止

    • レセプトの入力ルールを統一することで、返戻率を下げられる

    • 患者対応に関する情報がスタッフ間で共有され、トラブルを未然に防ぐ

  3. 持続可能な組織づくり

    • 院長が休暇を取れる体制を作り、長期的な経営の安定を確保

    • スタッフが責任を持つことで、やりがいと定着率が向上


レセプトをチームで共有する意義

レセプトは、単なる請求業務ではなく、クリニック経営の基盤となるデータです。診療報酬の正確な算定は収益に直結し、加えて診療内容や患者層の傾向を把握するツールとしても有用です。

レセプトをチームで扱うことには、次のような意義があります。

  • 属人化の解消
    一人の事務スタッフに依存せず、複数人で点検・入力を分担することで業務が止まらなくなる。

  • 教育効果
    新人スタッフもレセプトに触れる機会を持つことで、学習のスピードが上がり、即戦力化が進む。

  • 経営データの可視化
    レセプト集計を共有することで、患者数の推移や診療内容の傾向をチーム全員で把握できる。


役割分担と責任の明確化

チーム経営を実現するには、役割と責任をはっきりさせることが不可欠です。

  • 医師:診療内容の正確な記録とレセプトへの反映を最終確認

  • 看護師:診療補助のほか、必要に応じて算定要件の補足説明や確認

  • 医療事務:レセプトの入力・点検、返戻対応、請求業務の中心的役割

このように責任範囲を整理することで、各自が自分の役割を理解し、責任を持って業務に取り組める体制が整います。


チーム経営を支えるコミュニケーション

レセプトを含む経営情報をスタッフ全員が理解するには、定期的な情報共有の場が欠かせません。

  • ミーティングの導入
    週1回の短い打ち合わせで、レセプト上の疑問点や改善点を共有する。

  • マニュアル化
    レセプト入力ルールを文章化し、新人教育やトラブル対応に活用する。

  • オープンな情報環境
    返戻や減点の原因を院長だけで抱え込まず、スタッフ全員に共有して学びに変える。


まとめ

クリニック経営は、院長一人が背負い続けるにはあまりにも複雑化し、負担が大きくなっています。特にレセプト業務は、正確性とスピードを両立させるために、チームで分担し共有することが不可欠です。

チーム経営への移行は、単なる業務効率化ではなく、スタッフのやりがい向上や患者満足度の改善にもつながります。これからの時代、クリニックは「院長一人で経営する場」から「チーム全員で支える組織」へと進化していく必要があるでしょう。