2025.09.22
クリニック奮闘記
Vol.994「患者の笑顔も数字で守る!現場スタッフが納得する数値管理」
はじめに
クリニック経営において、院長は経営者として数字を読む力が求められます。しかし、現場スタッフには「患者の命や健康」と「数字(特にお金)」を同列に扱うことへの抵抗感があります。「患者のために」と言えば数字は後回しにされ、経営管理の重要性が見過ごされがちです。
ここで大切なのは、数字は患者の命や健康を守るためのリソースを最適に配分するための道具であると理解してもらうことです。本記事では、現場スタッフが納得して数値管理に取り組める方法を具体的に解説します。
1. 数字に対する現場の心理的抵抗を理解する
医療現場では「命や健康はお金で買えない」という価値観が強く、利益やコストに関する話になると反発が生まれます。スタッフは「数字=経営者の都合」と捉え、日々の業務にプレッシャーを感じることがあります。
しかし、数字管理は目的ではなく手段です。患者の待ち時間削減や診療効率改善、医療ミス防止といった具体的成果を生むためのツールとして数字を扱うことが重要です。
2. 数字は患者サービスの質を支える道具
クリニックが限られた人材や設備、時間の中で多くの患者に質の高い医療を提供するには、資源の最適配分が欠かせません。
例えば:
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人材配置:看護師や医療事務の配置をデータで最適化することで、患者待ち時間を短縮
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設備稼働率:検査機器の使用状況を数値化し、無駄な稼働や空き時間を減らす
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診療件数管理:診療単価や回転率を確認することで、過重労働を避けながら安定した医療提供が可能
このように数字を活用することで、結果的に患者の満足度向上や医療安全の確保に直結します。
3. 現場に落とし込める具体的指標
数値管理を浸透させるには、現場スタッフが理解できる具体的指標を設定することが重要です。
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医師向け:診療件数、患者対応時間、再診率
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看護師向け:問診や検査準備の時間、患者説明時間
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事務スタッフ向け:受付処理時間、会計精度、予約管理の正確性
これらの指標を毎週あるいは毎月レビューし、改善状況を数字で可視化します。結果が明確に見えることで、スタッフも数字の重要性を理解しやすくなります。
4. PDCAサイクルで結果を検証
数字を設定するだけでは意味がありません。**PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)**で結果を検証する仕組みが必要です。
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Plan(計画):月間・週次の数値目標を設定
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Do(実行):スタッフが日々の業務で目標に沿って行動
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Check(評価):電子カルテやシステムから実績を数値化し分析
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Act(改善):課題点を抽出し、次回の計画に反映
数値による検証は、感覚ではなくデータに基づいた改善策を立案できる強力な手段です。
5. スタッフへの理解と納得感を高める
数値管理を現場に浸透させるためには、スタッフが**「数字=患者のための行動量」**と捉えられるようにすることが重要です。
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KPIボードやグラフで実績を可視化
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月次ミーティングで改善点と成功事例を共有
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数字を評価する際には個人ではなくチーム全体の成果として称賛
これにより、数字への抵抗感が減り、スタッフも積極的に目標達成に取り組むようになります。
6. 結果へのコミットメント
数字管理を通じて、クリニックの以下の成果が期待できます:
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待ち時間の短縮、診療効率の向上
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患者満足度の向上
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医療安全や医療サービスの質の維持
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経営基盤の安定化
数字は単なる利益追求ではなく、患者により良い医療を提供し続けるための基盤であることを現場に理解してもらうことが重要です。
まとめ
精神論に頼るのではなく、数値管理を患者サービス向上の手段として位置付けることが、クリニック経営において最も現実的で効果的なアプローチです。
スタッフが数字の意義を理解し、自分の業務改善やチームの成長に結び付けられれば、患者満足度と経営成果の両立が可能になります。