2025.10.07
クリニック奮闘記
vol.1007 業務効率化がクリニックの"隠れコスト"を消す
業務効率化が経営に与える影響
クリニック経営において、業務効率化は直接的な収益改善だけでなく、スタッフの負担軽減や患者満足度向上にもつながります。見過ごされがちな"隠れコスト"として、スタッフの待機時間や非効率な情報共有、手作業による重複業務などが挙げられます。
総務省統計や医療関連研究では、医療事務スタッフの約20〜30%の業務時間が非効率的な作業に費やされているという報告があります。これを改善することで、限られた人員と時間でより高い付加価値を生み出せます。
クリニックにおける隠れコストとは
隠れコストは、会計上は目立たないが、経営効率に影響する費用や時間を指します。代表例は以下の通りです。
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手待ち時間
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患者情報の準備、カルテ確認、診療前の準備などで発生する待機時間
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医療事務や看護師の労働効率を低下させます
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情報共有・伝達の非効率
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書類や口頭での伝達により、確認や修正が頻発
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ミス防止のために再度作業が発生することがあります
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重複・手作業による入力
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電子カルテ・レセプトソフト・紙帳票への二重入力
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データの不一致が返戻や査定を生むリスク
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スタッフ間スキルのばらつき
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経験差により作業効率に差が生じ、全体の作業時間が増加
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これらの隠れコストは、業務効率化の取り組みにより大幅に削減可能です。
業務効率化の具体的手法
クリニックにおける業務効率化の基本的手法は以下の通りです。
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業務フローの見える化
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スタッフの作業工程をフローチャート化し、重複や手待ちを特定
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無駄を削減し、作業順序を最適化
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IT・システム活用
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電子カルテのテンプレート利用、レセプトソフトの自動チェック機能
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データ入力や集計の自動化によりミス削減と時間短縮
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業務委託・アウトソーシング
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レセプトチェック、帳票整理、集計作業などを外部に委託
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コア業務にスタッフを集中させ、効率を向上
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標準作業手順書(SOP)の整備
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業務フローを文書化し、全員が同じ手順で作業
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属人化を防ぎ、業務時間を安定化
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スタッフ教育とクロストレーニング
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複数スタッフが同じ作業を担当できるよう教育
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突発的な欠勤や繁忙期にも業務が滞らない体制を構築
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効率化の効果と定量評価
業務効率化の成果は、客観的に評価することが可能です。
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作業時間の短縮
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業務フロー改善後の作業時間を記録し、削減効果を数値化
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人件費削減効果の算定
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作業時間削減により、必要人員数や残業時間を調整
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人件費削減と利益改善の関係を可視化
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ミス・返戻率の低下
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自動チェックやSOP整備により、請求ミスや返戻を減少
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精度向上による収益安定効果を評価
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スタッフ満足度の向上
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作業負荷の軽減は、離職率低下やモチベーション向上につながります
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これらの定量評価により、業務効率化がクリニック経営にどの程度寄与するかを客観的に判断できます。
実践に向けたステップ
業務効率化を実行する際は、段階的なアプローチが効果的です。
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現状分析
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各スタッフの作業時間、業務内容、ミス率を把握
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改善ポイントの特定
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重複作業、手待ち時間、入力ミスの発生箇所を洗い出す
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改善施策の実行
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IT活用、SOP整備、業務委託、教育の順に導入
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効果測定と改善の定着
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作業時間・返戻率・人件費を比較し、PDCAを回す
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継続的改善
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月次レビューで新たな課題を把握し、業務フローを随時更新
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隠れコスト削減で実現する経営改善
クリニックの業務効率化は、隠れコストを可視化し削減することで、時間・人件費の両面において経営改善につながります。特に以下の3点が重要です。
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業務フローの見える化と重複排除
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IT活用と標準作業手順書による属人性排除
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教育とクロストレーニングによるスタッフ能力の平準化
これらの施策を組み合わせることで、限られたスタッフと時間で、効率的かつ安定したクリニック経営が可能になります。