2025.10.07
クリニック奮闘記
vol.1006 月次で利益改善!診療報酬+レセプト分析を経営に活かす方法
月次利益改善の重要性
クリニック経営において、月次の利益管理は安定した経営を維持するうえで不可欠です。毎月の収支を把握するだけでなく、診療報酬やレセプトデータを活用して収益構造を分析することにより、改善の余地が明確になります。
厚生労働省の統計によれば、診療所の収益構造は診療科目や患者層によって大きく異なり、同じ件数の診療でも利益率に差が生じます。そのため、単なる売上や利益の把握だけではなく、診療報酬とレセプトデータの組み合わせによる分析が経営改善の鍵となります。
損益だけで見ていては不十分な理由
多くのクリニックでは、月次決算や会計上の利益だけを指標に経営判断を行うことがあります。しかし、損益だけでは以下の課題があります。
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診療内容の違いを反映できない
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一律の利益だけで判断すると、実際には利益率の低い診療に時間を割いている可能性があります。
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スタッフ負荷の把握が困難
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利益の多い診療科目にスタッフ時間がどれだけかかっているかは会計上の数字だけでは見えません。
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返戻・査定の影響が埋もれる
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月次利益に反映されるまでタイムラグがあり、返戻の問題が認識されにくい場合があります。
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これらを補うために、診療報酬とレセプトデータを組み合わせた分析が必要です。
レセプトデータを用いた収益分析手法
レセプトデータには、診療行為、処置・投薬内容、保険種別、患者属性など、詳細な情報が含まれています。これを分析することで、収益改善の具体的なヒントを得られます。
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診療科目別の利益分析
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各診療科目ごとの収益とコスト(人件費・材料費など)を算出
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利益率の高い科目と低い科目を比較し、改善策を検討
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患者層別分析
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年齢層や保険種別ごとの収益構造を把握
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特定の患者層に偏った診療が利益にどう影響しているかを評価
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返戻・査定影響の可視化
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返戻による減収額を月次で集計
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ミスが多い処置や診療科目を特定し、教育・フロー改善の重点を決定
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時間単価の計算
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スタッフ1時間あたりの収益を算出
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利益効率の高い診療と低い診療を明確化
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これらの分析により、単なる売上や利益では見えない改善ポイントを把握できます。
改善施策の具体例
分析結果を経営改善に活かすためには、以下の施策が有効です。
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診療構成の見直し
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利益率の低い診療に過剰に時間を割かないよう、診療時間配分を最適化
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必要に応じて自由診療や付加価値の高い処置の導入を検討
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スタッフ配置の最適化
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診療科目・患者層別に必要なスタッフ数を見直し、時間効率を改善
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返戻や査定対応の負荷を軽減する配置計画を策定
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プロセス改善・効率化
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レセプト入力やチェックフローを標準化
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システムやテンプレートを活用し、入力ミスを減少
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月次レビューの習慣化
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月末に分析結果をスタッフと共有し、改善策をPDCAサイクルで実行
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数値に基づく改善活動を継続することで、利益の安定化が図れる
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経営判断への活用
レセプト分析を経営指標として組み込むことで、意思決定の精度が向上します。
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月次KPIの設定
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診療科目別利益、返戻率、時間単価などをKPIとして設定
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数値に基づき改善の優先順位を明確化
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改善効果の定量評価
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施策実施前後の収益・返戻率・スタッフ時間を比較
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効果の有無を客観的に判断
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中長期戦略との連携
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月次改善で得られたデータを基に、診療科目拡充や新規サービス導入の意思決定を支援
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分析から改善までの流れ
月次利益改善を実現するためには、以下のステップが効果的です。
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レセプトデータの分析
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診療科目・患者層別の収益構造の把握
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改善施策の実行(診療構成・スタッフ配置・業務効率化)
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効果測定とPDCAサイクルの継続
これにより、損益だけでは把握できない収益構造の課題が明確になり、経営改善が可能となります。