vol.1005 返戻率を半分にするプロセス改革

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クリニック奮闘記

2025.10.07

クリニック奮闘記

vol.1005 返戻率を半分にするプロセス改革

返戻・査定がもたらす経営への影響

クリニック経営において、返戻や査定は収益だけでなくスタッフ業務にも大きな影響を与えます。返戻が発生すると、医療事務スタッフは修正作業や再請求対応に追われ、本来の業務効率が低下します。厚生労働省の統計によれば、返戻率は一般診療所で約5~7%、規模の大きなクリニックでは10%前後になることもあります。

返戻や査定の原因を分析し、適切な改善策を講じることは、クリニック経営改善に直結します。本記事では、返戻率削減のためのプロセス改善を客観的視点で整理します。


返戻率の「見える化」

返戻率を改善するためには、まず現状把握が重要です。

  1. データ収集

    • 過去6〜12か月の返戻・査定件数、対象診療科目、原因コードを集計します。

    • 頻繁に返戻される項目や時期を把握することで、改善の優先順位を決められます。

  2. 指標の設定

    • 「返戻件数÷総請求件数」や「査定金額÷請求総額」といった指標でモニタリング。

    • 月次・診療科別に比較することで、課題を客観的に把握できます。

  3. 傾向分析

    • 例えば、特定の診療科目や保険種別で返戻が集中する場合、スタッフ教育やフロー改善の重点ポイントが明確になります。

返戻率の「見える化」により、改善施策の効果も定量的に評価可能です。


返戻の主な原因と予防策

返戻・査定が発生する原因は多岐にわたりますが、典型的なものは以下です。

  1. 診療記録と請求内容の不一致

    • 診療記録に処置や投薬が正しく記載されていない場合、査定対象となります。

    • 防止策:カルテ記載の標準化とダブルチェックの仕組み

  2. 入力ミス・コード選定誤り

    • レセプト入力時に誤ったコードを選択するケース。

    • 防止策:コード対応表や自動チェック機能の活用、スタッフ教育

  3. 保険制度・診療報酬の理解不足

    • 制度改正や点数改定に対応できていない場合、返戻のリスクが増加します。

    • 防止策:定期的な制度研修と最新情報の共有

  4. システム運用上の不備

    • 電子カルテやレセプトソフトの設定ミス、テンプレート未更新による返戻

    • 防止策:月次での設定確認、システムマニュアル整備

これらの原因を整理すると、返戻の大半はプロセスや教育の改善で削減可能であることがわかります。


プロセス改善の具体的手法

返戻率を半減させるために、客観的に効果が認められる改善策は以下の通りです。

  1. チェックポイントの明確化

    • 診療終了後の請求前に、チェックリストに基づき確認作業を行う。

    • チェックリストには、診療科目、処置、投薬、保険種別などを網羅

  2. 役割分担とダブルチェック

    • 入力担当と確認担当を分けることで、人的ミスを減少

    • 経験の浅いスタッフでも確実にチェック可能

  3. 教育とフィードバック

    • 返戻事例をもとに月次教育を実施

    • ミスの原因と対策を全員で共有することで再発防止

  4. 定期的なデータ分析

    • 返戻の傾向を月次で分析し、改善の効果を定量化

    • どの科目やスタッフに重点教育を行うか判断可能

  5. システム活用

    • 自動チェック機能、入力補助テンプレート、マスタ管理を徹底

    • 特に診療報酬点数改定時には迅速に更新


改善施策の効果と経営指標への活用

返戻率の改善は、単なる事務効率の向上にとどまらず、経営改善の指標として活用できます。

  • スタッフ業務時間の削減

    • 返戻対応に費やす時間を削減することで、本来業務に集中可能

  • 収益改善

    • 再請求や査定による減額を防ぎ、月次利益の安定化に寄与

  • 継続的改善サイクル

    • PDCAサイクルを回すことで、返戻率低下の持続性が確保されます

客観的なデータに基づく改善活動は、スタッフの作業負荷軽減と収益安定の両面で有効です。


返戻率半減に向けた優先施策

クリニックが返戻率を大幅に改善するためには、以下の3点を優先すると効果的です。

  1. 返戻データの収集・分析による課題把握

  2. チェックリストとダブルチェックを組み込んだ業務フローの整備

  3. 教育・システム活用による再発防止と属人性排除

これらを組み合わせ、PDCAを回すことで、返戻率は半減、さらにはさらなる経営改善へとつながります。