vol.1041 試行錯誤と小さな一歩―クリニック経営における改善プロセス

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クリニック奮闘記

2025.11.25

クリニック奮闘記

vol.1041 試行錯誤と小さな一歩―クリニック経営における改善プロセス

クリニック経営における改善とは、単発の大改革ではなく、日々の試行錯誤と小さな取り組みの積み重ねによってしか実現されない。多くの院長が、「何か大きな施策を打たなければ」と焦るあまり、準備不足のまま自由診療や新規システム導入に着手し、失敗するケースが少なくない。しかし実際には、現場の状況を正確に把握し、改善策を小さく試し、成功事例を横展開するプロセスこそが、持続可能なクリニック経営に直結する。

本稿では、クリニックの改善プロセスを実例とともに論じ、小さな一歩を積み重ねる重要性を明らかにする。


1. 大規模改革はリスクが高い

多くの院長が陥りやすい罠として、いきなり大規模な改革を試みることが挙げられる。たとえば、電子カルテの全面更新や大規模な自由診療の導入、スタッフの完全配置転換などである。理論上は合理的に見える施策でも、現場に定着させるには時間と教育コストが必要であり、スタッフが適応できないまま実行すると、かえって業務の混乱や離職を招く。

クリニックL院の例では、院長が最新型の電子カルテを一気に導入した。しかし導入初月、スタッフは操作方法に慣れず、予約管理やレセプト入力でミスが多発。患者対応にも支障が生じ、結果として来院数が一時的に減少した。この事例は、改革を「小さな試行」として段階的に進める必要性を示している。


2. 小さな試行の効果と意味

改善プロセスの本質は、まず小さな試行を行い、その結果を観察・分析することである。例えば、自由診療の新規メニューを一つだけ導入して、1〜2か月の反応を測る。スタッフの対応状況、患者の受け入れ状況、収益への影響を定量的に確認したうえで、次のステップを決める。

美容皮膚科を併設したクリニックM院では、初めての自由診療として"簡易レーザー施術"を試験的に開始した。導入前にはスタッフに十分な研修を行い、患者への説明フローを明確化した。初月の予約数は限定的だったが、対応フローの確認とスタッフの評価を行った結果、2か月目以降に少しずつ予約が増加。最終的には新たな収益源として定着した。

このように小さく試すことで、失敗リスクを最小限に抑えながら改善の成果を確実に積み上げることができる。


3. データに基づく意思決定の重要性

試行錯誤の過程では、感覚に頼らずデータを基に意思決定することが不可欠である。来院数、予約率、再診率、自由診療の予約件数、スタッフの業務効率など、可視化された数値を定期的に分析することで、改善策の有効性を判断できる。

クリニックN院では、スタッフが「この施策はうまくいく」と口頭で報告していたが、実際には予約キャンセル率が高く、自由診療の予約率はほとんど増えていなかった。院長がデータを整理し、施策の見直しを指示したことで、翌月には予約フローの改善が進み、患者数も安定した。この例は、感覚ではなく数値に基づいた意思決定が、試行錯誤の精度を高めることを示している。


4. スタッフとの協働で改善を進める

改善は院長だけで進めるものではない。現場のスタッフと協働することにより、現実的で持続可能な施策を設計できる。スタッフは現場の状況を最もよく知っており、ちょっとした変更が業務にどのような影響を及ぼすかを把握している。

ある内科クリニックO院では、受付の業務効率化のために、スタッフ全員で改善案を出し合い、導入前に小規模なテストを行った。その結果、予約入力の順序変更や、患者案内フローの改善など、小さな変更だけで待ち時間を大幅に削減することができた。このような現場主導の試行は、スタッフのモチベーション向上にも寄与する。


5. 小さな改善の積み重ねが組織文化を変える

一度だけの成功は、短期的な成果にとどまる。しかし、試行錯誤を繰り返し、小さな改善を積み重ねることは、クリニック全体の組織文化を変える力を持つ。スタッフが「改善は現場の声を尊重して進められる」という経験を重ねると、能動的に提案や改善を行う文化が醸成される。

皮膚科クリニックP院では、月1回の改善ミーティングを導入し、スタッフが自分たちで問題点を発見し、試行策を提案する仕組みを作った。半年後、患者からの待ち時間クレームは減少し、スタッフの離職率も大幅に改善した。この事例は、改善のプロセス自体が、組織を強化する効果を持つことを示している。


6. 改善の優先順位を見極める

小さな改善を繰り返す際には、優先順位を明確にすることが重要である。すべての問題を同時に解決しようとすることは、スタッフの負荷増大と経営混乱を招く。経営上のインパクトと実現可能性の両面を考慮し、まずは取り組みやすい施策から始めるべきである。

クリニックQ院では、最初にレセプト返戻率の改善を優先し、次に自由診療メニューの試験導入、さらに予約フロー改善を段階的に進めた。この結果、各施策が現場に無理なく浸透し、経営改善の効果を最大化できた。


7. 結論――試行錯誤と小さな一歩が、持続可能な経営を支える

クリニック経営において、変化は避けられない。しかし、大規模改革に頼ることは高リスクであり、失敗した場合の影響も大きい。重要なのは、小さく試し、データに基づき評価し、段階的に改善策を積み重ねることである。これにより、スタッフの理解と協力を得ながら、確実に経営改善を実現できる。

試行錯誤の積み重ねは、単なる業務改善にとどまらず、クリニックの組織文化やスタッフの自発性を育む。院長が一歩ずつ着実に取り組むことで、3年後、5年後も安定した経営を維持するための基盤が築かれるのである。