Vol.1098 ネガティブリスト方式による医療事務統制の有効性

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クリニック奮闘記

2026.02.16

クリニック奮闘記

Vol.1098 ネガティブリスト方式による医療事務統制の有効性

医療機関における業務統制の手法として、従来は詳細マニュアルによるポジティブリスト型管理、すなわち「許可された手順のみを実行する」方式が広く採用されてきた。この方式は一定の標準化効果を有する一方、診療報酬制度の複雑化と運用環境の変動性が高まる中で、実務上の硬直性が次第に顕在化している。

これに対し、近年実務的有効性が指摘されているのがネガティブリスト方式による統制である。本方式の特徴は、禁止事項のみを明確に定義し、それ以外の領域については現場の裁量判断を許容する点にある。医療機関のレセプト業務に適用する場合、まず組織としての最終目的、すなわち法定準拠性、査定耐性、説明可能性の確保を明文化し、その達成を阻害する行為のみを禁止項目として設定する構造となる。

この方式が有効に機能する理由は、統制と自律の均衡が制度的に担保される点にある。完全な自由裁量では品質ばらつきのリスクが拡大するが、過度な統制は現場の適応力と改善意欲を低下させる。ネガティブリスト方式は、最低限の安全柵を設けつつ、現場の判断力と改善能力を活性化させる中間的統制モデルとして位置付けられる。

レセプト請求代行の実務においては、例えば算定要件未確認請求、医学的根拠不十分な症状詳記、医師確認プロセスの省略などを明確な禁止事項として設定することで、品質リスクの大部分は管理可能となる。そのうえで、チェック手順の設計、作業分担の最適化、業務フロー改善などについては現場の創意工夫を許容する方が、中長期的には処理効率と精度の双方を高める傾向が認められる。

また、本方式は人材育成の観点からも有効性が高い。禁止事項が明確に示されている環境では、担当者は「何をしてはいけないか」を理解したうえで、「どうすればより良くできるか」を主体的に考えるようになる。この思考プロセスの蓄積が、単なる作業者ではなく判断型医療事務人材の育成につながる。

したがって、医療機関マネジメントにおける統制設計は、「どこまで詳細に指示するか」という発想から、「どのリスクを明確に遮断し、どの領域を現場に委ねるか」という境界設計の問題として再定義される必要がある。特にレセプト請求代行体制の高度化を志向する医療機関において、ネガティブリスト方式は実務的有力選択肢の一つと位置付けられる。