Vol.1194 「2人主治医制」という連携の形――整形外科クリニックに見る外来機能分化と紹介の収益化

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クリニック奮闘記

2026.06.29

クリニック奮闘記

Vol.1194 「2人主治医制」という連携の形――整形外科クリニックに見る外来機能分化と紹介の収益化

2026年度診療報酬改定は、外来医療の機能分化と医療機関相互の連携を、これまで以上に診療報酬の構造の中心に据えた。大病院と地域のかかりつけ医がそれぞれの役割を分担し、患者を適切に行き来させる――この理念を実現するための評価が、今回いくつも整備された。本稿では、運動器疾患を扱い、病院との連携が日常的に発生する整形外科クリニックを実例として、外来機能分化の流れをどう経営に取り込むかを考察する。

今回の改定で注目すべき項目の一つに、連携強化診療情報提供料の見直しがある。この評価は、算定の対象となる医療機関の範囲が拡大され、紹介元と紹介先のいずれが情報提供を行った場合でも算定が可能となるよう整理された。さらに、病院の専門医と地域のかかりつけ医がいわゆる「二人主治医制」に合意した上で情報提供を行った場合にも算定できるよう見直されている。これは、患者を一方的に紹介して終わりではなく、専門医と地域医がともに一人の患者を継続的に診ていくという連携の形を、診療報酬上で正面から評価する試みである。

今回の改定全体を貫く外来医療の機能分化という方向性は、限られた医療資源を効率的に活用するという政策的要請に根ざしている。大病院が専門的で高度な急性期医療に資源を集中させ、安定期の慢性疾患管理や日常的な診療は地域のかかりつけ医が担う――この役割分担を明確にすることが、医療提供体制全体の効率と質を高めるという考え方である。今回の改定では、特定機能病院等が再来患者を地域へ逆紹介する流れを促す評価が整備される一方で、大病院に紹介状なく受診する患者への対応も含め、外来機能の分化を多面的に後押しする仕組みが組まれている。整形外科クリニックは、こうした機能分化の流れの中で、地域における運動器医療の担い手としての役割を改めて問われることになる。

整形外科クリニックは、この外来機能分化と連携の流れを最も日常的に体験する診療科の一つである。具体的な場面を想定してみよう。あるクリニックの整形外科医は、変形性膝関節症の患者を継続的に診ている。保存療法で経過を見ていたが、症状の進行に伴い人工関節置換術の適応を検討する段階に至ったため、手術が可能な基幹病院へ紹介する。手術後、患者は再びこのクリニックに戻り、リハビリテーションと術後の経過観察を地域で受けることになる。このとき、基幹病院の整形外科専門医とクリニックの整形外科医が、一人の患者について情報を共有しながらそれぞれの役割を果たす――まさに「二人主治医制」が機能する場面である。

従来、こうした連携は医療者の善意と手間に依存する部分が大きく、その労力が必ずしも評価に結びついていなかった。今回の改定で連携に対する評価が整備されたことは、地域のかかりつけ医として患者を継続的に支える整形外科クリニックの役割が、診療報酬上でも正当に位置づけられたことを意味する。経営者としての院長が考えるべきは、この連携評価を単発の算定機会として捉えるのではなく、自院が地域の医療連携ネットワークの中でどのような結節点を担うのかという、より大きな戦略の中に位置づけることである。

マーケティングの視点からは、外来機能分化の進展が、クリニックの「選ばれ方」を変えつつあることに注目したい。今回の改定では、特定機能病院等からの逆紹介患者に対して初診を行った場合の評価(特定機能病院等紹介患者受入加算)が新設された。大病院は専門的な急性期医療に集中し、安定期の患者は地域のクリニックへ逆紹介するという流れが、制度的に後押しされている。これは整形外科クリニックにとって、基幹病院からの逆紹介患者を受け入れる地域の受け皿としての役割が、新たな患者獲得経路として重みを増すことを意味する。基幹病院との連携実績を地道に積み重ねてきたクリニックは、逆紹介という形で安定した患者の流入を得やすくなる。連携とは、医療の質を高める手段であると同時に、患者の流れを設計するマーケティングの基盤でもあるのである。

経営管理全般の視点を加えれば、外来機能分化の時代において、整形外科クリニックが自院の機能を明確に定義することの重要性が増している。すべての疾患を自院で完結させようとするのではなく、自院が得意とする保存療法やリハビリテーション、術後の経過管理に注力し、手術や高度な専門治療は基幹病院に委ね、そこから患者が戻ってくる流れを設計する。この役割分担を明確にすることが、限られた資源を効果的に活用し、医療の質を高めることにつながる。リハビリテーションを行う整形外科クリニックは、理学療法士などの専門職と専用の施設・機器への投資が必要であり、設備投資の負担も小さくない。だからこそ、自院の機能を絞り込み、その機能において地域で確固たる地位を築くことが、投資回収の観点からも合理的なのである。

人的資源管理の視点からは、連携業務を担う人材の育成が課題となる。連携強化診療情報提供料のような評価を確実に算定するためには、診療情報提供書の作成、紹介・逆紹介の記録管理、算定要件の確認といった事務作業を正確に処理する体制が必要である。連携が制度的に評価されるということは、その連携を支える事務の質が、そのまま収益に反映されるということでもある。医療事務スタッフが連携業務の流れと算定要件を正しく理解し、取りこぼしなく処理できるかどうかが、外来機能分化時代のクリニック経営における一つの分水嶺となる。レセプト請求の精度が、連携という医療の質を収益へと翻訳する最後の一里塚なのである。

ここで、診療報酬の枠組みを超えた制度環境の変化にも目を向けておきたい。2025年に成立した医療法等の改正により、医療提供体制は構造的な転換期を迎えている。とりわけ、医師が多い区域における無床診療所の新規開設に対して、事前の届出制や要請・勧告といった規制が設けられることとなった。これは、外来医療の地域偏在を是正し、機能分化を促す政策の一環である。整形外科のように都市部での開業が集中しやすい診療科にとって、この開業規制の動向は、新規開業や分院展開を構想する際の重要な前提条件となる。さらに、かかりつけ医機能を評価する機能強化加算の施設基準に、業務継続計画すなわちBCPの策定が義務づけられるなど、平時の診療体制だけでなく、災害や有事における事業継続の備えまでが評価の対象に組み込まれつつある。経営者としての院長は、診療報酬の点数表だけでなく、こうした医療提供体制全体の制度設計の変化を視野に入れ、自院の立ち位置と将来の展開を構想する必要がある。

財務の視点から総括すれば、外来機能分化と連携評価の整備は、整形外科クリニックに「自院は何をする医療機関なのか」という根源的な問いを突きつけている。すべてを抱え込むのではなく、地域の中で役割を分担し、連携によって患者を適切に行き来させる――その流れを設計し、評価に結びつけることができる医療機関こそが、これからの時代に持続可能な経営を実現できる。

患者サービスの視点を加えれば、外来機能分化と連携の進展は、患者にとっても利益をもたらすものである。膝や腰の痛みを抱える患者にとって、専門的な手術が必要な局面では基幹病院の高度な医療を受けられ、術後の経過観察やリハビリテーションは住み慣れた地域のクリニックで継続して受けられる――この役割分担が円滑に機能すれば、患者は症状の段階に応じて最も適した医療を、過不足なく受けることができる。二人主治医制とは、突き詰めれば、一人の患者を医療機関が奪い合うのではなく、ともに支えるという発想の転換である。整形外科のように、急性期の手術と慢性期の運動器管理という性質の異なる医療が一人の患者の経過の中で連続する診療科においては、この連携の質がそのまま患者の生活の質を左右する。連携を収益化するという経営の論理と、患者に切れ目のない医療を届けるという医療の理念とが、ここでは矛盾なく両立しうるのである。

ここで一つ、経営者が陥りやすい誤解を指摘しておきたい。外来機能分化と連携の評価が整備されたからといって、それが直ちに自院の増収を約束するわけではない。連携に対する評価は、あくまで実際に連携を行い、その手間に応じた事務を正確に処理した医療機関に対して支払われるものである。診療情報提供書を作成し、紹介と逆紹介の記録を管理し、二人主治医制の合意を文書として残すといった作業を、日々の診療の傍らで継続的に行う体制がなければ、制度上の評価は絵に描いた餅に終わる。むしろ、こうした連携業務は医師とスタッフの双方に新たな負担を課すものであり、その負担に見合うだけの評価が得られるよう、業務の流れを設計し直す必要がある。連携の評価を収益に変えるとは、医療の質を高める努力と、それを支える事務体制の構築という、二つの作業を同時に進めることにほかならない。この両輪が噛み合ってはじめて、外来機能分化の時代における連携は、医療機関の経営を支える柱となる。

2人主治医制という新しい連携の形は、医療の質と経営の安定を両立させる一つの解として、整形外科クリニックの院長が真剣に検討するに値するものである。