Vol.40 大いなる誤算、施設の健康な老人

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2017.12.27

Vol.40 大いなる誤算、施設の健康な老人

病床再編や在院日数の短縮などにより、病院機能は変革を求められて久しくなりました。

こうしたことは、地域医療にも影響を及ぼされることとなりますが、ここから在宅医療が政策的にも誘導

されていくこととなります。

しかし核家族化した日本では、自宅で家族に見守られて最期を迎えるのは困難で、そんなニーズに対応す

べく、「サービス付き高齢者住宅」や「住宅型有料老人ホーム」などが建設される様になりました。

施設は近隣の開業医と連携し、往診(訪問診療)に来てもらうことで、施設の付加価値サービスとしてい

ます。「同一建物」については診療報酬が減算される様になってからは、積極的に施設訪問する医療機関

は少なくなりましたが、それでも外来診療の診療単価と比べると、まだまだ手厚くコストが設定されています。

本稿では、新築の「サービス付き高齢者住宅」から訪問診療の提携を持ち掛けられたAクリニックのお話し

です。

施設運営会社「半年後に、うちの施設がオープンするので、入居者の訪問診療をお願いしたいのです

                         が・・・、満室になれば40人になります。」

A院長   「クリニックからは車で15分の距離だし、お引き受けしますよ。」

 

A院長は、「同一建物の減算」はあるものの、40人もいれば外来よりは効率がいいと考え、引き受けること

にしたのです。

さて、運営会社の営業力の甲斐もあり、施設は満床でオープンを迎えることができた様です。

さて、今日は訪問計画について、施設の責任者とケアマネージャを交えての第1回目の打ち合わせの日で

す。

 

施設責任者「これが、訪問診療をお願いしたい入居者のリストです。」

A院長  「3人・・・ですか?」

     「満床で40人ではないのですか?」

施設責任者「募集当初の計画では、医療の必要な方の入居を優先しようということだったのですが、応募

が少なくて・・・・。すいませんでした。」

医療介護が必要な入居者を集める予定でしたが、最近では「サービス付き高齢者住宅」や「住宅型有料老

人ホーム」も建設ラッシュで、入居者を取り合っている状況です。

時間を掛ければ目的に叶う入居者を集めることができたかもしれませんが、こちらの施設では満室にす

ることを優先し健康な老人との契約も進めてきた結果でした。

A院長は、打算通りにならなかったことに歯噛みをしながらも、しぶしぶ引き受けることとなりました。

 

(まとめ)

簡単に訪問診療のコストについて解説します。

一軒家の場合の訪問診療料は833点/回、月2回以上の訪問で在医総管4200点が加算されます。

合計5866点(293点/回)

同一建物の場合の訪問診療料は103点/回、月2回以上の訪問で在医総管1000点の加算です。

合計1206点(603点/回)

こうしてみると、一軒家に比べて、施設への訪問診療の点数が低いことがわかりますが、それを人数でカ

バーすることで移動時間が不要な分、経営効率は上がっていくという理屈です。

A院長は1回当りの訪問単価が603点であることは、平均的な外来診療よりもコストが高いということ。

また40人であれば1206点×40人=48240点となり訪問計画を上手くスケジューリングすれば悪くないとい

う判断から引き受けたのです。

ところが、実際は3人ですから、1206点かける3人=3618点となり、意気消沈してしまったのです。

今は健康ですが、そこは高齢者です。

いずれは医療介護が必要になりますので、A院長にとっては先行投資というべきでしょうか。

施設の訪問診療では、運営会社の経営方針の影響を少なからず受けることになります。

また訪問診療は外部の医療機関、介護サービス等は施設側が行っているため、介護スタッフとの連携、コ

ミュニケーションも疎かにできません。(介護スタッフとの関係については別の機会にお話ししたいと思

います。)

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代表コンサルタント  柳  尚信

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