Vol.11 スタッフの親が来院。「いつも娘がお世話になっています」

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2017.11.26

Vol.11 スタッフの親が来院。「いつも娘がお世話になっています」

クリニック内における全ての責任は院長にあります。とはいえ、企業の様にシステマティックに管理できるはずもなく、スタッフ個人個人が、その時々で判断を行っているのが実情です。責任者といえども全体を把握するのは極めて困難で、特に診察時間中は診察室の外で起こっていることについて、院長が知る術はありません。

本稿では院内で起こった、「ある事件」についてお話ししたいと思います。

 

今年は9月に入ってから気温が急に下がったこともあり、冬に入る前から風邪の患者でお賑わいです。連日の多忙な業務に体調を崩すスタッフも出てくる程です。

 

事務員B「院長先生、ちょっと風邪気味なのですが、院内のお薬をもらって帰っていいでしょうか?」

A院長 「ちょっと診察しようかな。」

    「うん、少し疲れが出たんだろうね。鎮痛薬と胃薬を処方してあげるから、薬庫から取ってきて。」

 

こちらのクリニックは院内処方のクリニック。必要な薬品は院内に在庫として保管されています。事務員Bさんは、院長に処方してもらったお薬を薬袋に入れて持って帰りました。

スタッフの体調がすぐれないときは、いつもこんな調子で院長が診察をして薬を処方しています。

事件が起こったのは、あるスタッフの母親が診察の為、来院したその時でした。

 

母親C 「先生、いつもウチの娘がお世話になっております。」

A院長 「いえいえ、お世話になっているのは僕の方ですよ。B子さんは本当によくやってますよ。」

    「ところで、今日はどうされましたか?」

母親C 「ちょっと喉が痛むので診て下さい。いつもは娘が先生からもらった薬を飲んでいるのですが、残り少なくなったもんでねえ。」

と言って、娘からもらった薬をA院長に見せたのです。

ところが、この薬、A院長が処方したものではなかったのです。不審に思ったA院長はB

子さんに問いただしたところ、薬庫から無断で持ち出したというのです。医薬品の取り扱い

についての知識はあるはずなのですが、毎日、手に取っているうちに、少しくらいという安

易な気持ちが芽生えたのかもしれません。

B子さんがしたことは、医療人としてあるまじき行為であると同時に立派な犯罪です。

 

(まとめ)

院内にある備品や薬品など、医師の処方がなければ手にすることはできません。院内の常備薬であれば、一定のルールを決めてスタッフが使用することは許されますが、処方薬の場合はそうはいきません。医師の処方がなければ購入できませんし、その他院内の診療材料についても勝手に持ち出すことはできません。

今回の件は立派な犯罪なので申し開きの余地はありません。再発防止策としては在庫表を作成し、定期的に在庫チェックをする。あるいは薬品の取り扱いは、必ず2人以上のスタッフで行うなど、院内で相互に監視する仕組みを設けましょう。医療知識だけでなく法律面でのコンプライアンスについても、折に触れお話しすることも効果があるでしょう。

 

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世の中に成功体験は数多くありますが、苦労話や失敗談を見聞きすることはあまりありません。クリニックの中で実際に起こった、先生方がこれから経験するかもしれないトラブル事例をエッセイ風に読みやすくまとめてみました。
成功ノウハウを真似るのは難しいですが、失敗のリスクを予見し、軽減することでクリニック経営を安定させることができます。本稿では思いがけないトラブルが連発しますが、「他山の石」として実際の経営に活かしてください。

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