2017.11.26
Vol.13 事業計画って「画餅」じゃないの?
A院長のクリニックは、開業当初こそ患者が少なく毎日が苦労の連続でしたが今では連日40人を超す盛況ぶりです。院長の人柄は言うまでもなく、親切丁寧な診察が地域に受け入れられている様です。しかしながら毎日の多忙な診察とは裏腹に、院長は開業当初の熱い気持ちがなくなっていく自分に危機感を感じ始めていました。
ある日、顧問税理士がいつもの様に経理処理のためにクリニックに来たとき、A院長は、そんなやるせない気持ちを打ち明けてみました。
A院長「毎日忙しいのはいいんだけど、少しマンネリ化してるんですよ」
「開業当初は毎日のように自分の将来のことを夢見ていたけど、これから先どうした
ものかね?」
税理士「毎年の目標を決めた事業計画書を作ってみませんか?何か目標があれば頑張れると思いますよ! 」
A院長「なるほど。いっちょ、やってみましょうか!」
顧問税理士の提案もあり、事業計画を作ることを受け入れたA院長は少し目の前が明るくなった様に感じました。そうして1週間後、顧問税理士が作成した事業計画書の説明を受けています。
税理士「今年度の実績をもとに5年間の計画書を作ってきました。毎年10%ずつの増収
しますので、5年間で150%の計画です。」
「目標達成のために何をしたらいいのかを考えてもらえますか?」
A院長「なるほど、これは夢のある計画ですね。これが達成できたら欲しかったエコーの買い替えもできるしね。」
「しかしだね。毎日40人の来院がある訳だから、これが60人になるということだよね。今でも結構キツイんだけど、この人数は僕のスタイルでは達成できるイメージが持てないよ」
税理士「では、目標を下げて作ってみましょうか?」
A院長「これって、絵に描いた餅の様に思えるんだけど・・・・・・。」
こんなやりとりが2人の間で約2時間行われましたが、A院長の気持ちが晴れることはありませんでした。目標達成のイメージがない不毛な時間にしか感じなかったのです。
そもそも、この事業計画は税理士が作った計画書であって、A院長の思いは何も反映されていません。今回、税理士が作成した事業計画書はあくまでも、参考資料に過ぎません。これをベースにして達成したい具体的な目標を考えるのはA院長です。何を目標にするのかは経営者である院長の判断です。
(まとめ)
目標設定の指標は医業収入、医業利益、器械の稼働率など様々です。そして目標は必ずしも金銭的価値に置く必要もありません。スタッフの教育、スキルアップに求めることもあります。それによって医療サービスの向上につながるからです。
ただし、その場合、目標を具体的な数値に置き換えられるものにしなければなりません。結果を客観的に測定することでTry&Error(検証→再考)ができる様にしましょう。
大切なことは、目標を数値化すること、それによって目標達成の為に何をすべきかを明確にすることなのです。
メディカルタクト
代表コンサルタント 柳 尚信