2017.11.26
クリニック奮闘記
Vl.15 値段交渉の方法
今年も患者数は順調に増えて、利益も当初の予想の1.5倍を上回っています。利益が出ているのは有難いのですが納税を考えると少し頭が痛くなります。税金を払うくらいなら、とA院長は医療機器の買い替えを検討することにしました。
購入予定の機器は心電計と血球検査機器の2種類で予算総額は500万円。
それぞれの見積もりは出入りの医療機器ディーラーBに依頼しました。
また、医療機器の購入を検討していることを、日頃は取引のない医薬品卸業者Cにも話したところ、見積もりを出させて欲しいとのこと。
合い見積もりを取るつもりでA院長も快諾し、それぞれの回答を待っていたのです。
暫くして、B社からはA院長が指定したメーカーの見積もりが出てきましたが、C社からは別メーカーの見積もりが出てきました。同一メーカー、同一機種での見積もりでないと「合い見積もり」の意味がないと訴えたところ、こちらの方が上位機種を安く購入できるというのです。
上位機種が安くなるというのなら、B社に依頼すれば、もっと安くなるはずとA院長は考えました。ところが結果はC社以上には安くなりません。
最終的にA院長はC社から上位機種を安価で購入することにしたのですが、どうも釈然としません。
医療機器の購入額は、どの様に決定されるのでしょうか?
業界のルール(慣習)がありますので、それについて解説させて頂きます。
(まとめ)
メーカーが提示する価格は、依頼を受けた順番で決まっていきます。1番に見積もりを依頼してきた業者に価格決定権があります。メーカーは2番手以降の業者には1番手の業者以上の好条件は出さないことになっています。
今回の事案を考えた場合、A院長が指定したメーカーの見積もりはB社が価格決定権を持っているため、C社はこの価格に対抗することができません。競争に勝つためには別メーカーで対抗するしかないのです。そこで別メーカーの上位機種を赤字覚悟でぶつけてきたのです。
結果的にA院長にとっては、いい買い物になったのかもしれませんが、今回の取引でC社は十分な利益が取れたとは思いません。試薬や記録紙などの消耗品の受注をすることで、長期的に利益を回収していくことになります。従って、本体の購入価格だけでなく消耗品についても価格交渉の対象とすべきという結論になります。
結論としては、1機種を複数業者で値段交渉するのは難しいということになります。
購入時の一回のみの取引であれば、初めての業者も含めて機種ごとにトコトン値引き交渉するのもよいですが、メンテナンスを伴う機種の場合は、今後の取引も踏まえアフターサービス(フォロー)を考慮し決定する方が賢明ではないでしょうか。
今回の事案で、最終的に足元をすくわれた形のB社は面白くないのは言うまでもありません。A院長のクリニックから足が遠のかないことを祈っております。
メディカルタクト
代表コンサルタント 柳 尚信