2017.11.26
Vol.17 経営理念は必要か?
医師会主催のとある経営セミナーに参加したA院長。医学的なテーマの講演や勉強会にはよく出かけますが、この手のセミナーが実は苦手で今までずっと避けてきました。
診療以外にもスタッフのこと、今後のクリニックの方向性をどうするか等、山積している問題を片づけるべく重い腰を持ち上げたのです。
初めて聞く経営学というものに、全ての話が新鮮に思え、眼から鱗の連続です。そんな中で気になったのが、「診療理念(経営理念)」を院内に掲示していますか?というものです。
最初は「そんなもの必要ないよ」と懐疑的に話を聞いていましたが、ふと開業当初の熱い思いが蘇ってきたのです。
講師 「どうして病院を辞めて、開業しようと思ったのですか?」
「開業した頃は、どんな思いで患者と向き合っていましたか?」
「どんなクリニックにしたいと思いますか?」
「スタッフの行動指針は何か示していますか?」
矢継ぎ早に講師から疑問を投げかけられ、一つ一つの問いかけに対して答えを探してみる。
A院長 「開業当初の初心に帰ってみよう! あの頃、僕はもっと患者に寄り添いたくて開業したんだった。」
「急性期病院では患者の最期を看取ることも殆どなく、与えられた時間の中でしか患者を診てこなかった。」
「患者と向き合って、最後まで寄り添う医療がしたかった。」
こんなことを頭の中で反芻しながら、胸が熱くなってきます。
開業当初は胸にあった、この「熱い思い」を第三者に伝えるために必要なのが、「診療理念」なのです。
自分で思っていても相手には伝わりません。思いは具体的な言葉にして初めて伝わりやすくなるのです。
診療理念(経営理念)というと堅苦しいのですが、自分の思いを簡潔に、わかりやすく表現すればよいのです。
伝える相手は、患者さんとその家族、スタッフをイメージしてください。
患者さんには、その思いがきっと伝わります。スタッフには診療理念を通じて、日々の行動指針を示してあげて下さい。院長が患者に対して思っていることをスタッフと共有することが重要です。
(まとめ)
診療理念は院内に掲示することをお勧めします。また朝礼等でもスタッフ全員で唱和するなどして全員で共有する様にしましょう。
大事なことは、カタチではなく「心」です。言葉の意味は日常の中で院長が解説することで、話を掘り下げ理解が深まる様にしてあげて下さい。
思いをつたえるために、診療理念はあります。
メディカルタクト
代表コンサルタント 柳 尚信