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2017.12.01

Vol.22 施設との関わり方

 A院長は午前診と午後診の間の時間に、近隣のサ高住に訪問診療に出かけます。

経営的には居宅中心にしたいところではりますが、そこは地域貢献と割りきって請け負いました。

本稿では、そんな施設で働く介護スタッフとのトラブルをご紹介したいと思います。

 

A院長 「さて外来も終わったので、そろそろ訪問診療に行こうかな。」

看護師 「先生、今日は3人の診察が入っています。施設側からは今朝のバイタルを送って頂いてますが、

     皆さん落ち着いている様です。」

 

この様にして訪問前には、事前に容態と前回のカルテを確認してから出掛けます。

 

A院長 「3人の診察も無事終了。では施設のスタッフさんとカンファして帰りましょう。」

 

これがA院長の施設訪問の基本スタイルです。

契約してからこの半年間は何の問題もありませんでしたが、

新人の介護スタッフが入職してから様子が一変しました。

 

施設staff「A先生、●●さんの熱が高い様なのですが入浴させてもいいでしょうか?」

A院長 「今、外来診察中なので、お昼に伺います。それまで待ってもらえますか?」

施設staff「他の人の入浴時間の調整もしないといけないので、早めに来て頂けますか?」

 

こんな電話が診療時間中に何度もかかってきては、その度ごとに診察の手を止めて電話対応をする事が

多くなりました。

 

A院長 「これでは仕事にならないなぁ。施設長は状況を把握しているのだろうか?」

看護師 「先生、今日の訪問診療の時に施設長と話しましょう。」

 

 (まとめ)

介護施設では入居者の日常の生活を支えています。

そこで働くスタッフにとって入居者は大事なお客様です。

そんなスタッフは、介護の実務経験はあっても医療の知識が乏しいことが往々にしてあります。

今回の事案の様に急用でない状態であるにもかかわらず、診察中の主治医に電話してくることはよくあります。また看護師でも具体的な指示がないと動けないスタッフもいらっしゃいます。

老健施設の様に専属医師であれば、24時間体制でフォローアップする必要があるのかもしれませんが、サ高住の場合は基本的にはその必要はありません。

診療契約はクリニックの院長と患者との個別契約があるだけで、施設側からなんら拘束される義務はないのです。

いつも診てくれている先生だからと、対応してくれるだろうと安易に電話をしてくる様ですが、お互いの立場を明確にしてサービス提供体制を築かなくてはなりません。

 今回の場合、介護スタッフとA院長とのやりとりを施設長は認識しておらず、現場の独壇場であったことが判明しました。その後、お互いに今後の対応については、細かく取り決めをしたため、継続して主治医として診療するということになり事態は収拾しました。

 変化があった場合には主治医に連絡する必要はありますが、外来診療中などの時間帯によっては、直ぐの対応が困難な場合があります。

予め状況に応じた対応をマニュアル化しておくことや、変化があった場合には必ずベテランスタッフの判断を入れる様にすることが重要です。

個人の判断で仕事をするのでなく、組織の判断軸で仕事をすること。

これが施設側に求められることではないでしょうか。

医療機関側との連携は不可欠であることを考えると、こうした施設スタッフの教育に関しても、訪問診療の医師には求められているのかもしれません。

               

                              メディカルタクト

                              代表コンサルタント  柳  尚信

 

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本当は知りたい失敗談!!

世の中に成功体験は数多くありますが、苦労話や失敗談を見聞きすることはあまりありません。クリニックの中で実際に起こった、先生方がこれから経験するかもしれないトラブル事例をエッセイ風に読みやすくまとめてみました。
成功ノウハウを真似るのは難しいですが、失敗のリスクを予見し、軽減することでクリニック経営を安定させることができます。本稿では思いがけないトラブルが連発しますが、「他山の石」として実際の経営に活かしてください。

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