2017.12.06
クリニック奮闘記
Vol.25 クリニックのリスクマネジメントを考える
クリニックを取り巻くリスクには様々なものがあります。
本日は、想定できる経営上のリスクに対しての対処方法を検討してみたいと思います。
院長個人の生命保険については除外し、損害保険領域におけるリスクに限定してお話しさせて頂きます。
具体的なリスクとしては、建物設備に関するもの、対人に関するもの、労務に関するものの3つに分類されます。
建物設備に関する代表的なものは「火災保険」があります。
テナント開業の場合は、内装設備が対象物件ということになります。
これに付随して医療機器には動産保険を付保するのが一般的です。
ここで問題になるのは保険金額をいくらにするか、ということです。
理屈としては安く設定すれば保険料もやすくなるのですが、
それでは正しく保険が機能しない場合があります。
保険金設定の基本的な考え方は再調達価格です。
同じ物を新しく購入しようと思ったらいくら必要ですか?という考え方です。
実務的には購入した金額で設定されます。
では保険料を安くするために保険金額を低く設定するとどうなるでしょうか?
2000万円の設備に対して1000万円の火災保険を付保しました。
この条件下、ボヤにより500万円の損害が発生しましたが、保険金としては250万円しかおりてきません。
もともと2000万円に対して半分の保険しか付保していませんので、
損害に対しても半分の評価しかされません。これを「比例填補」といいます。
火災保険に関しては「比例填補」にかからない様に満額で付保する様にして下さい。
動産保険についても同様に購入した金額で付保するのが原則です。
対人に関するものとしては「賠償責任保険」が代表格です。
クリニックの施設内で患者が転倒してケガをした様な場合に適用される「施設賠償責任保険」、
医療訴訟に関するモノとしては「医師賠償責任保険」があります。
また個人情報の流出に対しては「個人情報漏洩保険」保険があります。
労務に関しては労災保険が一般的です。
通勤中も含めて業務上でケガをした場合に適用されますが、認定には時間を要します。
その様な状況を補完する民間の保険もありますので検討してみて下さい。
院長(経営者)に関するモノとしては「所得補償(休業補償)保険」があります。
ケガや病気で就労不能になった場合に、一定の所得が補償される保険です。
保険料が高い商品なので、加入の場合は保険金額の設定も含めて慎重に検討してください。
(まとめ)
リスクに対する捉え方は人それぞれ異なります。
本稿で紹介したリスクは必要最低限の内容ですが、もちろんこれ以外にもたくさんあります。
しかし全てのリスクに対して保険でヘッジする考え方は資金がいくらあっても足りませんし、
保険貧乏になっては本末転倒です。
万一の場合に、キャッシュ(借入を含む)で対応しきれないリスクに対してのみ、
保険でヘッジするという考え方の方が合理的かもしれません。
経営者としては、予見できる全てのリスクをテーブルの上に載せて、如何にコントロールしていくかが求められます。
メディカルタクト
代表コンサルタント 柳 尚信