2017.12.21
クリニック奮闘記
Vol.36 近隣病院と薬局が撤退
院外処方が定着し、開業時には調剤薬局が近くにあることは必須条件の一つになっています。
また患者の急変時の受け入れ、専門外来のある病院との連携も開業時の関心事ではないでしょうか。
そんなことを考えて開業場所を決めたC胃腸科クリニック。
急変時の対応が可能な病院が近隣にあり、調剤薬局の隣にあるテナントで開業しました。
開業して10年経ち、経営も安定期に入った頃に病院を薬局が撤退することになり、これまでの診療スキー
ムの見直しを図られることになります。
薬局社長「先生、大変申し訳ありませんが、○○病院の撤退に伴って、ウチの店舗も半年後に閉鎖するこ
とになりました。」
C院長 「困ったことになったね。これまで一緒に頑張ってきたのに。」
C院長の関心事は薬局よりも病院の撤退の方にありました。
薬局は院内で対応することができますが、在宅医療を積極的に行っているCクリニックとしては、急変時の
受け入れ先病院の喪失は痛手です。
このことは、地区医師会の中でも最重要課題に上がっており、担当地区内で病床が減ることによる影響を
不安視しています。
(まとめ)
C院長は院処方も考えたのですが、知人から紹介された薬剤師に隣の薬局を居抜きで買い取ってもらえるこ
ととなり、薬局については問題を回避することができました。
問題の入院先のベッドの確保については、市立病院を利用しているのですが、大学の後輩を通して、何と
か無理を聞いてもらっています。
その後、医師会と行政による病院の誘致活動の甲斐があって、撤退した病院は「地域包括ケア病棟」とし
て別法人が運営することとなり、結果としてはC胃腸科クリニックとしては、一番いい形で決着しました。
調剤薬局はクリニックにとっては運命共同体です。
従来は医療機関側の要求に対して、無理をしてでも対応していましたが、診療報酬の削減に伴い、固定人
件費の多い企業経営の薬局ほど経営にシビアになってきています。
不採算店舗は撤退し、新規出店を促進させる「スクラップ&ビルド」を行います。
複数の医療機関から処方箋を応需している場合が多いのですが、店舗面積も大きく、ある程度の余剰人員
を抱えていますので、病院の撤退で10%の処方箋を失っても屋台骨が揺らいでしまうのです。
一方、一対一の関係性においては、クリニックの処方箋枚数に応じた薬局経営のため、弾力性を持った経
営ができています。
実は、家族経営の薬局ほど、こうした環境変化には強いのです。
長急性期病院は別にして、病棟再編の方向性が見えていない中小病院は意外に多くあります。
「急性期」にあこがれる病院経営者は多いのですが、急性期病院として地域包括ケアシステムを担える病
院のポテンシャルがない病院は方向転換していかざるを得ないと思われます。
開業医の先生方におかれましては、地域にある病院が生き残りをかけて、どの様な戦略で、どんな機能を
担うのかを考えてみて下さい。
病床再編はこれから本格的に進んでいきます。
隣の病院が無くなるなんてことは、日常的に起こるかもしれません。
※参考(平成29年12月15日産経新聞)
大阪狭山市の近大附属病院(929床)存続案一転 閉鎖方針
地域医療に影響 市「撤回求める」
施設の老朽化により堺市への移転が決まっていたが、近大が平成26年に大阪府と堺市の3者で交わした「基本協定書」などでは、①35年度に約1000床の新しい病院を泉北ニュータウン(堺市)に建設②堺市南区の近大医学部堺病院は閉鎖③大阪狭山市の医学部附属病院は300床規模で再編する-などの内容だった。
しかし、29年秋頃に近大が市などに示した変更案では大阪狭山市の医学部附属病院は閉鎖、さらに新設される病院の病床数も当初計画約1000床から800床へ減らすなどどなっていた。堺病院は残すが経営譲渡を検討するという。近代の担当者は「地元の要望は理解できる」とした上で、「計画変更の理由は人手不足と経済的要因にある。医師の退職や堺病院のけいえいの悪化などから、大阪狭山市の病院を残すのは困難」と説明している。これに対し古川市長は「誠に遺憾で強い憤りを覚える。到底容認できるものではなく、計画変更の撤回、現状と同様の医療機能を確保することを強く要請する」と反発している。
メディカルタクト
代表コンサルタント 柳 尚信
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