2018.01.04
クリニック奮闘記
Vol.43 診療圏分析の実際、開業後に検証してみると
新規開業時に「診療圏調査報告書」を目にした先生は多いと思います。
少しおさらいしてみたいと思います。
クリニックの住所を中心にして半径500メートル(一次診療圏)と半径1キロメートル(二次診療圏)の同
心円を描きます。それぞれの円の中の昼間人口(居住している人口)に、厚生労働省が発表している受療
率を乗じて潜在患者数を算出します。
そして算出された潜在患者数を競合クリニックで割ることにより、クリニックの来院患者数が求められま
す。
せっかく開業時に作成した「診療圏調査」なので、今後の経営に生かすべく検証してみたいと思います。
Aクリニックは開業10年になりますが、このために電子カルテから直近2年の患者の住所データを抽出し、
町丁ごとに集計してみました。それを「診療圏調査報告書」と比べてみます。
A院長 「駅前にタワーマンションができたので人口は随分と増えた様だね。」
「クリニックは●●医院と▲▲内科が閉院。逆に駅前に○○クリニックと△△クリニック
の2件が新規開業している」
「当初の予想と比べて実際はどうだろうか?」
コンサルタント「クリニックから1キロの辺りからの患者が多いですね。一次診療圏については患者の占有
率(シェア)が低いのが気になります。」
A院長 「やはり新規開業したクリニックに患者が流れている様だね。対策を考えてみよう」
(まとめ)
一般的にクリニックの患者は一次診療圏で80%を占めています。市場における占有率も90%を超えるので
すが、これはクリニックが近隣の住民で支えられていることの証明にもなります。
ところがAクリニックの場合は近隣のシェアが低く、遠方の患者が多いという結果が出ています。
原因としては、一次診療圏の患者が新規開業のクリニックに取られていると考えるのが妥当です。
若手の先生の新規開業は大きなリスクです。数年後に閉院するのであれば見過ごすこともできますが、こ
れから先15年~20年診療を続けていかなければならないとすれば、何らかの対策を講じる必要があるで
しょう。他のクリニックに変わった患者の動機は別に調査する必要がありますが、まずは広告戦略を検討
してみることにしました。
Aクリニックは生活習慣病の専門クリニック、駅前の新規開業のクリニックは呼吸器内科です。
専門性を明確に打ち出すことで患者への訴求力をあげようと考えました。また駐車場への誘導看板も目立
つものに作り直します。
開業時の「診療圏調査報告書」は一つの目安として利用されていますが、開業後に検証する必要はあります。
想定していたエリアから患者は来ているのか?想定外のエリアからの来院はあるのか?
10年経ったAクリニックの外部環境は大きく変化しています。
数年ごとに「診療圏調査」を行い、一次診療圏の占有率はチェックしてみるのもよいでしょう。
(参考)厚生労働省 患者調査の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/
Vol.44 患者アンケートの必要性、不満のある人は答えない
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report112.html
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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