2018.02.22
クリニック奮闘記
Vol.78 引継ぎ資産(在庫、減価償却資産)は現場で確認
前回はM&A(事業承継)における営業権について、金融機関による第三者評価のお話しをさせて頂きまし
た。それを受けて本稿では、M&A(事業承継)の契約に関する内容のうちで、棚卸資産の確認について解
説していきたいと思います。
M&A(事業承継)の契約において、基本的には譲渡資産は「現状有姿」という表現がされます。
簡単に言うと、「あるがままの状態」のことです。従って、契約に際しては、その状況を仔細に確認して
おかなければならないということになります。
本稿では、資産譲渡時の確認方法とリスクについてのお話しです。
「現状有姿」という取引形態は、不動産取引の中で慣習的に用いられています。
不動産取引の場合は、設備など不動産に附帯したものが多く、変更が加えられにくいのですが、クリニッ
クのM&A(事業承継)の場合は、建物の付帯設備に医療機器や備品等が含まれてきますので、後になっ
て、「あの機械がない!」なんてことが起こらない様にしたいものです。
まずは減価償却資産の確認です。適正に会計処理がされていれば、明細をもとに現物確認すれば事が足り
ますが、資産として計上漏れしている物件がある可能性があります。
また、少額資産など償却が済んだ資産は明細には記載されていません。
従って、資産の確認については、必ず、「現場」で「現物」を確認する様にして下さい。
同様に薬品や診療材料等の棚卸資産についても、「実地棚卸」を行い、数量を確認する必要があります。
以上の医療機器、器具備品、医薬品、医療消耗備品等は一覧にして目録を作成します。
またこれ以外の所謂、消耗品(取得時に全額経費処理する器具備品等)で、M&A(事業承継)後も継続し
て使用するものについても目録に掲載しておきましょう。
出来上がった目録には、日付を明記するとともに、売り手ドクターと買い手ドクターが連名で署名しま
す。
この様な手順を踏んでおけば、少なくとも、「この時点」における資産については問題なく引継ぎはでき
るでしょう。うがった見方をすると、この確認前であれば償却済みの物品の持ち出しは可能であるという
ことです。従って、「基本合意書の締結」から「本契約」に至る間で、速やかに行う必要があります。
クリニックのM&A(事業承継)で問題になるトラブルの一つが、引き渡し前の「資産の持ち出し」です。
当人同士で、「性善説」に基づいた契約の履行ではなく、現物を確認して目録を作成しておけばトラブル
は回避できます。
買い手ドクターに承諾を得ることなく、物品を持ち出すことは「窃盗」にあたります。
事が大きくならない様にするために、省略してはいけないポイントの一つであるといえます。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
(参考)Vol.77 営業権は融資の担保にならない
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