Vol.79 定借契約の落とし穴

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2018.02.23

Vol.79 定借契約の落とし穴

クリニック開業では、店舗などの物件を賃貸するテナント開業が一般的ですが、その契約形態にはバリ

エーションがあります。最もポピュラーなところでは「普通借家契約」と呼ばれている、契約期間が2年~

3年程度に設定されており、期間満了後は自動更新するというものです。

また商業施設内のテナントや医療モールなどの場合は、「定期借家契約」という契約形態が用いられてい

ます。この様な物件で開業されている先生方は、契約時にいろいろと説明を受けた上で契約されているは

ずですが、「定期借家契約」についてどれ程の理解がされていたでしょうか? この機会に今一度、見直

してみましょう。また、これから開業される先生方にとっては、借りる側の「定借契約」のリスクについ

て知っておいて頂きたいと思います。

 

これまで日本社会における契約というものは、基本的には性善説によるところが大きく、契約書の末尾に

も「契約書に記載のない事項については、甲乙双方協議の上で決めるものとする。」等と記載されていま

す。この一文を善意に解釈すると、「契約書にはいろいろ書いてあるけれど、話し合って決めていけばい

いんだ」とも読めますが、一旦、揉めると話し合いで決めることはできなくなります。最低限のこととし

て、契約条項を正しく理解し契約に臨んでください。本稿では「普通借家契約」と「定期借家契約」を比

較しながら、それぞれの内容を吟味していきたいと思います。

 

まず、それぞれの契約形態で大きく異なるのは、契約更新の有無にあります。

「普通借家契約」の場合、貸主側に正当な理由がなければ契約は自動更新されていきます。

貸主側の都合で退去させにくくしている契約内容です。

一方、「定期借家契約」の場合は、契約期間満了後は更新がありません。

引き続き賃借する場合は、「再契約」ということになります。

この場合の契約内容は、従前の契約内容に縛られることなく、貸主借主双方が協議の上で賃料等について

新たに取り決めすることになります。

もちろん貸主は再契約に応じる義務はなく、期間満了を以って終了とすることもできるのです。

貸主側のリスクとしては、クリニックを継続して経営しなければならない状態にあるにも関わらず、退去

を迫られる可能性があるということになります。

 

契約期間中の賃料は固定です。

貸主は賃料値下げのリスクを回避することができ、契約期間中の不動産利回りを確定させることができま

す。逆に借主は相場賃料が下がったからと言って、賃料の値下げ交渉はできませんので、契約締結時に十

分な交渉をしておきましょう。

 

最後に中途解約に関してお話ししておきます。

「普通借家契約」の場合、契約期間中は、借主側からは、いつでも解約の意思表示が可能です。

一方「定期借家契約」の場合、基本的には契約期間中は解約できません。

経営不振等の理由で廃業する様な事態になっても、テナント賃料は支払続けなければなりません。

退去する場合は、残存期間に相当する賃料の総額を支払った上でなければできません。

しかしこれには、借主側に対する緩和規定が設けられることがあります。

「中途解約条項」と呼ばれるものです。

やむを得ず事業を継続できない事由(病気や死亡など)が発生した場合の解約条項です。

この場合は残存期間に関わらず、契約が解除されるとする条項を入れることがあります。「定期借家契

約」の本来の姿ではありませんが、借りる側の防衛策としては交渉材料のカードの一つにしましょう。

 

「定期借家契約」では通常の契約書とは別に、「定期借家契約についての説明」が義務付けられていま

す。「普通借家契約」と比べると法律的にはハードルが高いと認識されているためです。

誤解のない様に付け加えますが、「定期借家契約」が悪いのではありません。

不動産の有効利用の観点から発生した契約形態です。

要なことは契約内容を理解し、自分の開業スタイルに合わせることができるか否かを熟慮してくださ

い。

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

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世の中に成功体験は数多くありますが、苦労話や失敗談を見聞きすることはあまりありません。クリニックの中で実際に起こった、先生方がこれから経験するかもしれないトラブル事例をエッセイ風に読みやすくまとめてみました。
成功ノウハウを真似るのは難しいですが、失敗のリスクを予見し、軽減することでクリニック経営を安定させることができます。本稿では思いがけないトラブルが連発しますが、「他山の石」として実際の経営に活かしてください。

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