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2018.02.26

Vol.80 その医療法人、承継して大丈夫ですか?1(過去の脱税歴ほか)

クリニックをM&A(事業承継)する場合、個人診療所であれば前歴は一旦リセットされるのですが、医療

法人の場合は設立当初から全ての内容、つまり医療法人の歴史そのものを継承することになります。

医療法人格に瑕疵(かし)がなければいいのですが、契約に際しては「何かある」と想定して精査する必

要があります。全てをテーブルの上に並べることは難しいかもしれませんが、設立時から時系列に医療法

人の歴史をトレースしていくことで、事業承継時のトラブルを減らしていくことができます。

本稿では、医療法人の過去の履歴のうちで、将来に影響を及ぼす可能性のあるもについて言及していきた

いと思います。

 

A医師はクリニック専門のM&A業者を通じて、あるクリニックの事業承継を検討中です。

設立されて10年になる基金拠出型の医療法人です。

出資持分がないことについては、解散時に残余財産が分配されないという不都合があると言われています

が、幸いA医師には医学部に通うご子息がいるため、当面その心配はなさそうです。

 

A医師    「この医療法人の譲渡理由を教えて下さい。」

コンサルタント「70歳を前にして院長が引退することになったんです。体調不良がその理由です。」

A医師    「医療法人に関して、マイナス要因は何もないのですね。」

コンサルタント「3年前の税務調査で追加納税しています。それから決算内容と運営面に対して、医療対策

                              課(医務課)から行政指導を受けていた様です。」

A医師     「それはクリニックをM&A(事業承継)した後に問題になる内容ですか?」

コンサルタント「影響が全くないとは言い切れませんが、内容についてお話しておきましょう。」

 

クリニックを開業すると、個人診療所であっても医療法人であっても、一定サイクルで税務調査を受ける

ことになります。これは一般調査として全ての事業所が受けるもので、マルサ(査察)が行う強制執行と

は異なります。

税務調査は通常の場合、3年分の申告について1日~2日をかけて、内容の妥当性を調査されます。

事務的なミスや経費に対する認識の相違などにより修正申告を求められることがありますが、ちょっとし

た不注意や不勉強による場合は、税務当局による「指導」の上で修正申告と納税で終了です。

今回の譲渡対象になっている医療法人の場合、通常調査ではあったものの、指摘内容に問題があった様で

す。

 

・自由診療の過少申告(実際よりも少ない金額で申告していた)

・棚卸金額の過少評価(仕入金額が多くなり、申告所得が減ることになる)

・架空人件費の計上(実際にはいないスタッフの人件費が計上されていた)

 

この事例の場合、悪意をもって故意の脱税行為と看做され、「過少申告加算税」と「重加算税」の課税決

定がなされました。また医療法人設立後、10年の間に合計で3回の税務調査を受けているのですが、過去2

回の税務調査でも修正を行っており、どうやら税務当局のブラックリストに入っている様です。

 

A医師    「随分と荒っぽい過去がある様ですが、このクリニックはM&A(事業承継)

                              しても大丈夫なんでしょうか?」

コンサルタント「確かに過去の経歴には問題がありますが、ブラックリストに入っていたとしても、今後

                             の申告が適正にされていれば問題はありませんよ。」

 (まとめ)

本来はノーマークの状態からスタートするので、リスト入りからのスタートは面倒には違いありません。

もしかすると痛くもない腹を探られることがあるかもしれません。

しかしながら、コンサルタントの言う通り、過去に脱税行為があったとしても、今後の税務申告が適正に

されていれば問題はありません。「禊(みそぎ)」の為の期間が必要かもしれませんが、税務当局から、

しっかりと指導してもらうつもりで望めばよいでしょう。

脱税は違法行為ですが、適切な節税はクリニック経営にとっても有効な手段です。

法律に抵触しないクリニック経営(運営)であれば恐れることは何もありません。

 

※次回は医療法人の行政指導についてお話したいと思います。

 

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

 

(参考)

大阪府ホームページ「医療法人制度と運営」

http://www.pref.osaka.lg.jp/iryo/hojin/seido_unei.html

 

◆クリニックのM&A(事業承継)関連のバックナンバー◆

・Vol.77 営業権は融資の担保にはならない

https://medical-takt.com/backnumber/2018/report221.html 

 

・Vol.78 引継ぎ資産(在庫、減価償却資産)は現場で確認

https://medical-takt.com/backnumber/2018/report222.html 

 

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