2018.02.27
クリニック奮闘記
Vol.81 その医療法人、承継して大丈夫ですか?2(過去の行政指導)
前回は、医療法人のM&A(事業承継)事案で、過去の事務調査で「脱税行為」があった場合についてご紹
介致しました。医療法人となると、個人診療所と違って様々な行政機関から指導監督を受けることがあり
ますが、本稿では医療対策課(医務課)からの行政指導を中心にお話しさせて頂きます。医療は認可事業
なので、行政指導はある意味「絶対的」なところがあり、法令順守(コンプライアンス)の運営は医療法
人にとって大原則です。
指摘内容を基に行政の視点が何処にあるのかを検証するとともに、クリニックのM&A(事業承継後)の注
意点を整理していきたいと思います。
医療法人に対する指導監督規定としては、報告徴収、立入検査、改善命令、業務停止命令又は役員の解任
勧告及び設立認可の取消に係るものがあります。このうち報告徴収、立入検査については、医療法人の業
務若しくは会計が法令、法令に基づく都道府県知事の処分、定款もしくは寄附行為に違反している疑いが
あり、又はその運営が著しく適正を欠く疑いがあると認めるときにできるとされています。なお、業務停
止命令、役員の解任勧告及び設立認可の取消の処分を行うに当たっては、審議会の意見を聞かなければな
らないとされています。クリニックのM&A(事業承継)前には、前回の税務調査の履歴と併せて行政処分
の有無についても確認していきます。
A医師 「税務調査のことはよくわかりましたが、他に都道府県による行政処分はあったんでしょう
か?」
コンサルタント「何点かの指導があったようなので、今後の対応の必要性も併せてご報告致します。」
当該医療法人には過去に以下の様な行政指導を受けています。
・医療法人の資金を理事ファミリーに貸付している
医療法人の資金を、通常の運営業務以外に流用することは禁じられています。
資金流用により医療法人の運転資金に影響を及ぼすからです。
オーナー医師の持ち物であることには違いはありませんが、個人的に資金を流用してはいけません。
この場合、行政指導により貸付金の返済を迫られることになります。
金額が大きく一括返済が無理な場合、返済計画の提出を求められることもあります。
・株式などの有価証券への投資を行っていた
個人的な資金流用と同じく、運転資金の減少を招く恐れのある資金運用も禁止されています。
株式等の有価証券をはじめ、投資信託についても同様です。また投資目的の不動産購入も禁じられていま
す。この場合、即座に個人が買い取るか、市場で売却することで現金化する必要があります。
・都道府県に対する決算報告を行っていない
個人診療所の場合は、確定申告書を税務署に提出、納税することで完了しますが、医療法人の場合は毎期
決算終了後に都道府県宛に決算報告書の提出があります。
併せて医療法人の資産の総額も法務局で行います。(役員の改選については2年毎に登記)
報告義務を怠った場合、悪質であれば設立取消もあり得ますので、決算後のルーチン業務と位置付けて処
理する様にします。行政からの指摘があった場合、速やかに提出して下さい。
・理事に欠員が出ていたにもかかわらず、指導があるまで選任されなかった
死亡等により欠員が生じた場合、速やかに新たに選任する必要があります。
決算確定後、議事録には、医療法人の決算承認の署名(記名ではない)押印がなされるので、ここを最終
ラインと考えて選任する様にしましょう。事例の医療法人の場合、議事録を記名式で作成し、事実上、医
療法人内部で押印していた事実がありました。そのため理事に欠員が生じたことを認知していなかったこ
とに原因があります。行政からの指摘後、速やかに対応した為、大事には至りませんでしたが、原則通
り、署名押印することにより、理事の職責を全うする様にしましょう。
(まとめ)
医療法人は定款及び医療法等に準拠した運営が求められています。
公益性の高い法人であるがゆえに、内容的には一般法人よりも窮屈な運営内容ではありますが、ルールを
守って正しい運営に努めましょう。
※医療法人の運営については、都道府県のホームページに掲載されていますので、詳細はご確認下さい。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
(参考)
大阪府ホームページ「医療法人制度と運営」
http://www.pref.osaka.lg.jp/iryo/hojin/seido_unei.html
◆クリニックのM&A(事業承継)関連のバックナンバー◆
・Vol.77 営業権は融資の担保にはならない
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report221.html
・Vol.78 引継ぎ資産(在庫、減価償却資産)は現場で確認
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report222.html
・Vol.80その医療法人、承継して大丈夫ですか?1(過去の脱税歴ほか)
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report230.html
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