2021.03.23
クリニック奮闘記
Vol.664 雇用契約と委託契約 ~ 業務の外注化について ~
本稿では、クリニックのスタッフと、外注業者の立場を法律的な観点から解説していきたと思います。同じ職場で、同じ業務を行っていても、契約形態が異なれば仕事に対する解釈も異なってきます。
スタッフの雇用に際しては、『雇用契約書』の締結により、労使の関係が成立します。この労使関係において、法律上、雇用される側(スタッフ)の権利はかなり強いものになっています。使用者は"気に入らない""仕事ができない"からといって、簡単には『解雇』することはできません。スタッフが一定レベルに達するまで、教育指導訓練する義務があります。使用者側は義務を果たした上であっても『解雇』の妥当性は問われてきますので、雇用するにあたっては経営者に覚悟が必要といえます。一方、窓口業務を外注する様な場合、現場で勤務するスタッフの勤務場所はクリニックではありますが、雇用主はクリニックではありません。現場の業務に対する指示命令系統はクリニックの院長にありますが、その支配下には置かれていないのです。請負業者は、特定の業務について"業務を請け負って"いるのですが、人に責任があるのではなく、"業務の品質"に責任を負うことになります。サービスの質が悪ければ、クリニックから契約元の会社に改善命令を出すことができます。スタッフをチェンジすることも問題ありませんし、最悪の場合は、契約解除すれば一切の関わりがなくなります。(一定の解約条件はあります)ここが雇用契約とは大きく異なる点です。
(まとめ)
雇用契約の解除は簡単にはできません。労働契約はスタッフに"強力"な権利を認めています。一方、外注業者との関係は、契約書における解約条項に沿って解除することができます。
さらには、サービスの納品レベルが、期待値より著しく低く、クリニックの運営に支障をきたすような場合は、損害賠償請求の対象にもなり得ます。同じ職場で、同じ仕事をしていても法律的な枠組みが全く異なります。外注業者を利用する場合に考えて頂きたいポイントの一つです。
代表コンサルタント 柳 尚信