2021.04.16
クリニック奮闘記
Vol.668 医療法人内での役割分担
組織の中には、利益を生み出す部門(プロフィットセンター)と、それをサポートする間接部門(コストセンター)に分かれます。コストセンターというと、マイナスイメージがありますが、間接部門の役割は、プロフィットセンターのパフォーマンス効率を上げることであり、無くてはならない部門であることは言うまでもありません。
A医療法人には、外来診療部門をはじめ、訪問看護ステーションとデイケアを併設しています。院長は、それぞれの部門が単独で利益計上できる様に運営することを、各部門長に課題として与えています。毎月1回、院長が主催する部門長会議では、各部門の収支報告が行われ、事業計画に対する予実管理を行っています。その中で、いつも問題になっているのはデイケアの運営です。
A院長
「デイケアは昨年に開設してから、黒字になったことが一度もないね。」
デイケア主任
「介護度の高い利用者が多くて、手厚いサービスが必要です。スタッフ数も通常よりも、配置人数が多くなるので、人件費もかさんでしまっています。」
看護師長
「採算を考えて運営した方がいいのではないですか?何でもかんでも受け入れしているから、人件費がかかって利益がでないのではないですか」
会議でのやり取りを聞いていると、外来看護師と訪問看護師は、自分たちが頑張って稼いだ利益がデイケアに取られてしまっていると言わんばかりです。
(まとめ)
部門間の競争を煽るがごとく、部門別損益を作成している医療法人は少なくありません。そこで考えて頂きたいのは、A医療法人の様な小規模事業所で、「赤字部門」が本当に"悪"なのかということです。組織は役割分担の中で、それぞれが運営されなければなりません。確かにデイケアは赤字かもしれません。しかし、デイケアの運営による副次的な効果にも目を向けなければなりません。医療法人全体を一事業と考えた場合、外来診療や訪問看護ステーションとの相乗効果があると思います。赤字であっても一つの役割を担っているのです。
代表コンサルタント 柳 尚信