Vol.675 訪問診療の事業譲渡の落とし穴

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2021.10.20

Vol.675 訪問診療の事業譲渡の落とし穴

Aクリニックの院長は、外来診療に加えて、施設への訪問診療にも積極的に力を入れてきました。

"依頼されたら断らない"というスタンスで、どんな患者にも真摯に対応してきた結果、訪問先の施設も増えて、今ではアルバイトのドクターに手伝ってもらいながら往診を行っています。

開業して10年が経過した頃ですが、A院長は日頃の多忙さのせいなのか、体調を崩してしまい、約1月間入院生活を余儀なくされました。大事には至りませんでしたが、今後のことを考えて訪問診療を譲渡し、外来診療のみにすることにしました。

幸い譲渡先は直ぐに見つかり、これから事業譲渡のための準備に取り掛かります。

業務の交通整理や実務についてはコンサルタントに依頼することにしたので、A院長は一安心といったところですが、訪問診療の事業譲渡は外来診療にはない細やかさが必要な部分があります。注意すべき項目を順番に整理してみしょう。

①    事業譲渡契約書の締結

引き渡しの時期、譲渡金額、支払方法の取り決めをします

契約までに日数を要する場合は、一旦、基本合意書を締結し、実務を進めながら本契約の内容を詰めていく方法もあります。

※譲渡金額には消費税が課税されます

②    官公庁への書類提出

譲受側が医療法人である場合は、定款変更の手続きを行った上で開設許可申請をしなければなりません。

・定款変更には仮申請から本申請後の認証までに約1月

・開設許可申請は約2週間

引き渡しの前までに最低でも2ケ月を要することになりますので、行政機関には事前相談しながら段取りよく進める必要があります。

③    保険請求の訴求手続き

引継ぎ後に、保険請求が切れ目なくできる様にしなければなりません。そのために"遡求手続き"が必要なのですが、その段取りには注意が必要です。

引継ぎ後に管理医師になる予定の医師を、譲渡前のクリニックの従事医師として登録しておく必要があります。事前に勤務していることが患者情報の引継ぎの条件になっているとお考えください。

④    訪問先施設への告知

外来診療と違って、訪問診療の場合は、患者との個別契約の締結が必須です。これがなければ診療を行うことができません。引継ぎ前に全ての患者に説明を行い、契約書を締結しておく必要があります。引き継ぐ患者数にもよりますが、ひと月以上かかることもありますので、契約締結後の最重要項目の一つと考えておいて下さい。

⑤    スタッフへの告知

医療法人ごと譲り受ける場合は雇用契約も継続されますが、別の事業体に譲渡される場合は新規に雇用契約を締結し直す必要があります。

有給休暇の残日数の取扱い、退職金支払い時の在職期間の取扱いをどうするのかはデリケートな問題です。退職するスタッフも出てくるかもしれません。スタッフにとっては再就職のための時間が必要ですし、クリニックにも募集採用のための時間が必要になりますので、患者への告知同様、可及的速やかに話し合いの機会を持つ様にしましょう。

 

⑥    施設基準の確認

強化型の連携をしている医療機関の場合、連携先の医療機関との調整が必要です。

 

(まとめ)

契約にむけて権利関係の細かな内容を詰めることも重要ですが、譲渡が完了するまでの全体スケジュールを意識しながら進めて下さい。

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