2022.01.11
クリニック奮闘記
Vol.680 複数診療科目の苦悩
父親が急逝したことにより、急遽クリニックを継承することになった場合、事前準備もなしに経営者になることを余儀なくされるケースがあります。同じ診療科目であれば何とかなることもありますが、親子で異なる診療科目の場合は簡単にはいきません。本稿では、30年余り整形外科クリニックとして地域に根差していたクリニックの継承後の経営問題についてのお話です。
A先生は内科の専門医です。父は整形外科医として30年余り地域医療に携わってきましたが、1年前に持病が悪化し急逝。その後、急遽、長男であるA先生が継承することになりました。父とは違う専門科目であるため、暫くはアルバイトの先生に外来を担当してもらい、半年後には整形外科の外来をやめ、内科クリニックとして再生しようと考えています。
ある日、非常勤のB先生より、開業するので来月で退職したいと言われたA先生は慌てました。非常勤医師が担当している外来には、週3日で延べ300人の患者が受診しています。
他院に紹介しようにも一番近い整形外科クリニックは10キロ先の隣町です。リハビリだけなら、何とかなるかもしれませんが、整形外科の疾患となると診察できるはずもありません。人材紹介業者の力を借りて、アルバイトドクターで当面は凌ぐことになりそうです。
(まとめ)
来院される患者のことを考えると、外来をやめてしまうことに躊躇される先生がほとんどです。専門外の診療科目を続けるためには、非常勤医師を雇用するしか方策がないとすると、採用面での苦労が尽きることはありません。
クリニックを営業している間、何人ものドクターを採用しては辞めていきます。外来をやめると、一時期は患者対応で混乱をきたしますが、整形外科外来を続けた場合は、人事面での苦労がずっと続くことになります。
院長として、どのような選択をするのがよいのか、経営判断が試される問題です。