2024.04.01
Vol.698 医療事務スタッフのキャリアアップについて
私は立場上、医療事務スタッフの採用面接を行います。医療業界で30年以上も仕事に携わっていますので、延べにして5000人くらいは面接に関わってきました。そこで感じるのは、医療事務の社会的なステイタスの低さです。例外なく全ての人の共通認識となっています。では、医療事務という仕事が、どうして評価の低い仕事になっているのでしょうか。この問い掛けに対して掘り下げてみたいと思います。
採用面接で医療事務の社会的評価の低さについては、全ての被面接者が共感するところです。
では、どうして評価が低いのでしょうか?という質問をしてみると、『国家資格ではないから』『そんな仕事だと思っています』と答えが返っていきます。確かに求人広告を見ても全国的に最低賃金にスレスレの給料になっているようです。
これには私は2つの背景があると見ています。
①医師を始めとする医療者側の認識の低さです。 患者の健康や命の遣り取りをしている医療者と比べると、責任の重さが全く異なるのだという考え方です。また前述にある国家資格の必要のない業務であるということ。患者の健康と命を引き合いに出されると、確かにそう思えます。しかしながら医療はチームで行っています。チームには看護師だけでなく事務スタッフの含まれています。当たり前の話ですが、医療行為は、ルールに沿った保険請求という手続きを経なければ、経済的価値に変えることができません。医療行為をお金にしなければ、給料を払うことも、設備投資をすることもできないのです。
まずは、チームの一員であるということの認識を持つことです。
②そもそも医療事務スタッフの働きかたに問題があります。レセプト請求を始めとする全ての事務業務を、"作業"としてオペレーティングしているのです。"作業"はどれだけ頑張っても評価されにくいのです。誰でもできる業務と位置付けられますし、いずれは機械にとって代わられる可能性があるからです。作業として行っている業務に付加価値をプラスしなければ、第三者からの評価は得られないということです。
ここからが本題です。医療事務スタッフが、自らが業務に付加価値をプラスする働きかたをしなければならないというのが結論です。
付加価値とは・・・・、レセプトの作業内容の報告を医師に丁寧に説明すること。医師には医療事務スタッフのほどにレセプトの知識はありません。レセプトに関しては、スタッフの方が経験も知識も豊富なのです。つまり、院長先生に対してレセプトを"教えてあげる"のです。院長先生も、スタッフから学ぶことをしてください。これは、クリニックにとってもプラスのことであり、医療事務スタッフのモチベーションの向上にもつながります。結果として、クリニックの経営効率があがります。
医療DXの波はどんどん大きくなっていきます。
今の医療事務の仕事が5年先、10年先も残っている保証はないのです。自らの人生を切り開くためにも積極的に取り組んでいただきたいのです。またクリニックの院長先生にも、医療事務スタッフのキャリアアップについて積極的に関わって頂きたいというのが、私の考えです。