Vol.701 クリニック経営と利益について

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クリニック奮闘記

2024.05.09

クリニック奮闘記

Vol.701 クリニック経営と利益について

コロナ禍は私たちに、様々な問題を提起してくれました。売上ダウンどころかゼロを経験した業界もありました。政府の緊急融資や補助金等により生き長らえはしたものの、原状回復には至っておりません。というのも借入金の元金返済が始まり、返済に苦しんでいる事業所が多くあるのです。耐えきれなくなって今になって倒産、廃業という事業所も少なくありません。医療業界においても同様のことが言えます。本稿では、想定できない未来に備えて、如何に経営するのかという観点でお話をさせていただきます。

一般的に、先生方(医師)の所得は高いとされています。もちろん社会的、職業的な重責を考えて社会インフラとして機能させなければならないことを考えると、診療報酬の配分は十分にされる必要があります。永続的な地域医療を提供するためには、医療設備のアップデートが不可欠です。スタッフの処遇も考えなければなりません。そのための原資は利益にしかありません。『借入すればいいじゃないか』というお声が聞こえてきそうですが、この借入金の返済の原資も将来の利益にあるのです。将来の利益が見込まれるからこそ、借入が可能だと言えます。

コロナ禍で廃業、倒産に追い込まれた事業所には、資金繰りの見通しの甘さに一つに原因があると見ています。(全業種についてのお話です)

売上が半減、もしくはゼロになった事業所では、政府が融資をしてくれました。元金の支払い猶予や利子補給もありました。でもへんさいしなくてよいというものではなく、その期限はやがて到来します。返済するための原資は利益です。売上が戻らなければ当然、返済することはできません。『売上が戻るだけ』では十分ではありません。『以前以上の売上に』ならなければ事業所の体力だけでなく、個人の経済上状態も改善されないのです。残念ながら、ビジネスにおいて余程の革新がなければ、以前の売上を上回ることはないでしょう。それどころか、円安やエネルギー原料の高騰により、経費は増える一方です。環境はより劣悪になってきています。

これに対する備えは一つしかありません。中小零細企業(クリニックはここに入ります)が生き残るためには、自己金融しかありません。内部留保、つまり貯蓄です。先生方がイメージいやすいようにお話をします。

クリニックに利益が必要な理由は以下のとおりです。

①借入金の返済(元金返済は利益から行われます)

②スタッフの昇給賞与の支払い原資の確保

③医療機器のリプレイスの資金

④勇退後の退職金(自分で準備しなければなりません)

⑤勇退後の生活資金(自分で準備しなければなりません)

以上が主な内容です。返済や賞与の支払いはすぐに手元資金から出ていきますが、それ以外のものについては将来発生する可能性のある支出です。自己金融システムとして、内部留保していかなければならない内容なのです。

一時的に儲かったからと言って、散財しているようではコロナ禍のような状態が起こると耐えられなくなるわけです。

休業、廃業、倒産した事業所は全て、一時的な儲けを蓄えずに使ってしまっているからと言っても過言ではありません。

実際に自由に使える資金というのは、①~⑤を蓄えた上で、余剰が出た場合のみです。

こう考えると、事業が大きくなればなるほど、準備資金も膨らみますので、自由に使えるお金もそれほどなくなります。

事業とは、如何に永続的に発展させるかを常に考えなくてはなりません。先生方のクリニックは社会的な存在意義が大きい事業です。益々の繁栄のためには、堅実経営が望まれます。